ライター×成長

医療ライターが講演で話したネタ取り法、取材のコツ、記事の書き方

「ライター向けに講師をやってもらえないか」

ぼくが一緒に仕事をしている医療者向け会員制メディア「m3.com」の編集者からこんな依頼をもらいました。

m3.comは2020年6月現在、各地のユニークな医療情報を届ける「m3.com地域版」を全都道府県で運営していて、全国で150人ほどのライターや編集プロダクション代表が参加、うち3割ほどが常時稼働しているといいます。

新型コロナウイルス感染症の影響によってオンラインでの交流が増える中、「この機会にZoomで編集部とライターとの交流会をやりたい。ついては冒頭の15分に庄部(しょうぶ)さんに講師として語ってもらいたい」と相談がありました。

「面白そう」とぼくは快諾。

そこで今回は、医療ライターの庄部(@freemediwriter)がスピーチ用の原稿を記事としてアップします。

内容はライターとして大切だと思うマインドやノウハウに関することなので、この企業と仕事をしていない人も参考になることがあるかもしれません。

講演テーマと時間、文字数

  • ネタ取りの方法
  • 取材時の心がけ
  • 読まれる記事にするための工夫

編集者の要望は上の3点です。

15分を3分割して5分。この間に編集部側からの質問が挟まる―ぼくが一方的に話すよりも編集部との対話にした方がライターが聞きやすいのではと提案した―ことを考慮して、ぼくが話すのは実質3分半ほど。

ネットで調べたところ、このくらいのスピーチを文字数に換算すると1000文字ほどなので、1テーマはこれくらいのボリュームを意識します。

文体はぼくが話している体です。

ネタ取りの方法

ニュースは作り、デザインするもの

ぼくがまず大切だと思うのは、「ニュースは書き手が作り、デザインするものでもある」という考えを持つことです。

こんな意識があるかどうかで、ネタ取りの精度や結果が違ってくると思うんですね。

というのも、特にエムスリー地域版という媒体はライターからすると企画の自由度が高く、光を当てる部分がさまざまにあるためです。

具体的にはまず、「医師」「医療機関」「法人」の3つの側面から考えることができます。

そして、それぞれを細分化できます。

医師のニュースポイントであれば、

  • 出自
  • キャリア
  • 専門性
  • 地域活動
  • プライベートの姿

医療機関では

  • 外観
  • 院内環境
  • 診療内容
  • 診療時間
  • 人的体制
  • 地域連携

法人全体では「分院展開数」や「関連施設の充実具合」「経営論」などが焦点になり得ます。

エムスリー地域版では、「地域医療に関するユニークな情報」というように枠が広いので、上の要素のうち一つでも突出して独自性があればそれだけで企画を立てられることがあります(通るかは別ですが)。

要素が弱くても、組み合わせで強くなる

さらに、一つの要素が弱くても、組み合わせることでニュース性を高められる場合があります。

たとえば、ぼくが過去に取材した東京の「有明こどもクリニック」を例に挙げると、

  1.  小児科クリニックを4つ展開
  2. 平日夜9時まで、土日も診療
  3. 展開エリアは東京湾岸に集中
  4. 採算のとりづらい病児保育事業も実施

こんな特徴があるのですが、①だけでは「希少性がとても高い」わけではないですよね。

でも、ここに②と③を加えるとどうか。

読者の興味は増すでしょうし、病児保育事業を行っている医療機関は全国的に珍しいのでダメ押しの一手になります。

こんなふうに、

  • どこに光を当てるか
  • 光をどう組み合わせるか

はライター次第なので、まず「ニュースを作る」意識が大切かなと。

独自性と確実性ならクチコミ

ネタの取り方としてぼくが最も重視しているのはシンプルに、「医師や編集者から教えてもらうこと」です。

まだメディアに取り上げられていない人を知れることに加えて、人柄の上でもある程度スクリーニングを図れるからですね。

取材中は面白い情報を引き出そうと集中しているので終盤になるとくたくたになって聞くのを忘れそうになるんですが、そこは粘り腰。必ず聞くようにしています。

デジタルツールで自動収集

デジタルツールを使ってネタが自動的に集まってくるようにすることも大切です。

ぼくが活用しているのは

  • ヤフーニュースのテーマ機能
  • グーグルアラート

の2つ。

時間の関係で詳細は省きますが、特にグーグルアラートはリリースなどの一次情報も拾えるので便利です。

興味のある方は調べてみてください。

取材時に心がけていること

ライター取材で心がけていることもシンプルです。

  • めっちゃ楽しむこと
  • 楽しんでいることを伝えること

「いい取材」=「いろんな情報を引き出せる取材」とすれば、これを実現するために必要なのはテクニックよりも人間力だとぼくは考えています。取材はもう、人間で勝負していくしかないなと。

  • あなたにとても興味がある
  • あなたのことをもっと知りたい
  • あなたは魅力的だ、あなたの話はすごく面白い

こんな気持ちを口頭や表情、雰囲気、身振り手振りで伝えていくことが最も大切ではないでしょうか。

ぼくは今までに数千人を取材してきましたが、振り返ってみると自分に関心を持たれて嫌な気のする人はあまりいないように思うんですね。

人は自分を好いている人を好きになりやすい

これは取材でも言えることだと思うので、相手にそう感じてもらえれば自然と相手も「この人にはいろんなことを話したいな、教えてあげたいな」と思いやすいのではないでしょうか。

まずは感動ワード、次に展開ワード

その上で、一種のテクニックとしては、「感動ワード」と「復唱」と「展開ワード」を組み合わせながら相手の話に反応・質問すると取材がスムーズに進みやすいように思います。

「感動ワード(パワーワード)」

  • (へー)そうなんですか
  • (はー)なるほど
  • (それは)知らなかった
  • 面白い
  • 珍しい
  • すごい

「展開ワード」

  • それはつまり(どういうことですか?)(こういうことですか?)
  • ちなみに
  • 一方で
  • 率直に(本音で語ってほしいのですが)
  • なぜそこまで(やるんですか)
  • オフレコでも(いいので教えてください)

ちょうどいいバカさも大切

相手に失礼がないよう、または取材を効率的に進めていくためにも取材の前にはそれなりに準備をすることが大切ですが、これは必須であり特筆すべきことではないので割愛します。

あと1点、伝えるとすれば、記者やライターにはちょうどいいバカさがあるとなおいいと思うんですね。

例えば

医局って何ですか?

これは本当のバカ質問なのでNG。「そんなことも調べてないのか」と思われやすい。

でも

「総合診療医」と「家庭医」の違いって何ですか?

これはちょうどいいバカな質問だと思うんですね。

まあ、インパクトがあるようにこんな表現をしたんですが、

「ちょうどいいバカさ」というのは、「読者の多くが知らないであろうことを考えて、それを率直に聞く素直さと勇気」を意味しています。

バカな質問かもしれないけど気になるから聞かせて

こう言える勇気がライターには必要だと思っています。キャリアが経つほどバカな質問がしにくくなるので。

経験上、バカっぽい質問やざっくりした質問も取材では重要で、その答えが記事の肝になることもあるので軽視できません。

読まれる記事にするために

連載形式のエムスリー地域版で最もぼくが重要だと考えているのが、「事前に構成を練ること」です。

エムスリー地域版の記事を書くときは「連載の全ての文章を読んでもらうためにどうすればいいか」を考えるので、ノリでは書き始めないようにしています。

具体的にやっていることは

  • 各回でテーマを分ける
  • 各テーマに1つ山場を設ける

こと。手順としては、

  • テープ起こしを全て印刷
  • ざっと全てに目を通す
  • 重要な箇所にラインを引く
  • 感動した部分は「◎」や「☆」で差別化

ここから考えていき、2本連載の場合は、

  • 1本目と2本目のテーマ
  • 1本目と2本目の構成
  • 1本目の山場

これらをイメージしてから書き始めます。

山場を描くために書く

こんなシーンを描きたかった

作家や映画監督などのインタビューでこんなセリフを聞いたり見たりしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ぼくも、山場を描くために記事を書いている感覚が強いです。

「これは面白い!」「これは読者に伝えたい!」。そう思ったことをどう伝えるか、その山場をどう引き立てるかを考えて全体を構成していくことが少なくないように思います。

「山場」という文字通り、ライティングは登山に似ていると思うんですね。

登山ではいきなり山頂には着かなくて、麓があり、丘陵があり、険峻な岩場があってそれらを一歩一歩踏みしめていくわけですが、記事書きも冒頭からの丁寧な情報の積み重ねで山場が生きてくると思います。

山場を魅せるためのテクニックとしては、

  • 情景を描写すること
  • 具体的なセリフを入れること

取材中に「ここだ!」と思うところがあれば、

  • 季節、天気、時間、場所、風景、人物構成、人物の姿勢と動き、臭い
  • セリフ(地方の人であればどんな方言かも)

を聞いておくと、記事を書くときに生きることがあります。

それと、「情報」と「情緒」をセットにして書くことも意識していて、時間がないので割愛しますが、人間は情報だけでは心が動かされないのではないかと。

なぜ、どうしてこの人間はそんなことを考え、ここまでやるのか

説得力と情緒性を高めるため、これらを書き込んでいくことを大切にしています。

素晴らしい作品にどれだけ触れているか

「庄部さんは読まれる原稿を書くのが上手い」

エムスリーの編集者からそう言われてこのテーマをリクエストされたのですが、もしぼくがそんな記事を書けているとすれば、それは素晴らしい作品に触れ続けていることが関係しているように思います。

ぼくは年間に小説100冊、マンガ250冊、映画160本ほどを読んだり見たりしているんですが、こういった作品は受け手を飽きさせない工夫が随所に施されていると思うんですね。

なので、書き手の日常や習慣、ひいてはその人の人生が記事の質には影響するのではないでしょうか。

以上、医療ライターの庄部(@freemediwriter)でした。

追記

交流会の参加者の声を聞いたところ、ネタ取りに最も興味のある人が多いのではないかと思ったので、そこにフォーカスした記事も書きました。

ぼくがm3.com地域版で実践することを網羅しました。

【企画が尽きない】医療ライターが実践する面白い人・ネタの探し方300人以上の医師を取材してきた医療ライター庄部勇太が実践する「面白い医師」の探し方。記事を添付しながら解説します。...

また、そもそも医療ライターがどんな記事を書いているのかといったことに興味のある人に向け、医療ライターのあり様を紹介する記事も書きました。

意外と書くテーマが広いことが特徴です。

医療ライターとは?医療者500人を取材したライターが語る仕事内容医療ライターの仕事は実にさまざまで、病気の予防や治療について書くことだけではありません。ユニークな医療機関や医師の紹介、薬や医療機器・医療サービスの紹介、医療制度の解説、経営術やマネジメント論など多岐にわたります。...

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