地方ライターが面白いネタを取るにはどうすればいいか
今回は、タウン誌と新聞社の記者として7年間、地域を担当していたフリーライター・ショウブ(@freemediwriter)がこんなテーマで持論を語ります。

こちらの記事の続編です。
結論から言うと、地方ライターが独自性の高いユニークなネタを取るためには「とにかく足を動かすしかない」。そう考えています。
では、足を動かすにしてもどんな人に会っていけばいいのか、詳しく書きますね。
「地方」と一口に言っても実態は様々なのでこの記事はテーマがちょっと乱暴なのですが、ぼくとしては「市区町村レベル」を想定します。
県全域だと非効率なことが多いため省きました。が、応用できると思います。
ご参考ください。
なぜフットワークが重要なのか
そもそもなぜ、「地方ライターはフットワークが重要」とぼくが言うのかというと、それは世に出ていない地域情報が多いからです。
地域情報を掲載するメディアは
- 全国紙の地方版
- 地方紙
- タウン誌
- テレビ・ラジオのローカル局
- ウェブの地域メディア
- 地域ブログ
このくらいでしょうか。
列記すると案外多くのメディアや媒体が地域情報を取り上げていると思うかもしれませんが、実際は地方紙やタウン誌の記者でも取り上げていないニュースはたくさんあるんですね。
「地域密着」の代表である地方紙であっても、基本的に記者は警察担当、スポーツ担当、文化芸術担当などと役割が決まっていて、自分の持ち場でネタを落とさないこと(他紙に独自ネタを先に掲載されること)を重視している人が少なくありません。
なので、各メディアで伝統的に割り振られているジャンルに対しては一定の強さを発揮しますが、医療や健康などそうではない分野のニュースは「そうでもない」といった状況が起きます。
タウン誌においても偏りが生まれることは変わらず、広告収入で運営されているフリーペーパーの場合、地域のグルメ情報や美容情報などは充実していても、行政や経済、医療などの情報は載っていない媒体が多いですよね。
足を動かすことで面白い情報が見つかる余地が大きいわけです。
どんな人がネタを持っているか
それでは、どんな属性の人に会っていけばいいのでしょうか。
ぼくの考えは下の通りです。
- 役所の職員
- 商店主
- 政治家
- 大学広報
- 警察署、消防署の特定課
- 自治会町内会の会長
- 若者
それぞれ、理由を書きます。
役所の職員
淡々と受付対応や事務作業をしている人たち
一般の人の場合、役所の職員に対してこんな印象を抱いている人が多いかもしれませんが、記者として日常的に役人と接していると見方は変わります。
役所の中には地域に詳しく、「行政が絡む情報を積極的に出していきたい」「一般の人にも地域の動きを知ってもらいたい」といった熱を持っている人もいるんですね。
例えばぼくはタウン誌に勤めていたとき、毎週、役所の各課に顔を出して紙面を渡しがてら何か面白いことがないか聞いていましたし、新聞記者をしていたときは役所の職員から「載せてほしいことがある」と携帯に連絡をもらうことも少なくありませんでした。
まあ、これらは会社の看板があってこそと言えますが、フリーライターが仕事をしている媒体やその人のパーソナリティーによっては同じような関係を築ける可能性があります。
商店主
ぼくが会社で記者をしていたとき、配属エリアが決まったら早々に商店街を訪れていました。
テレビのロケ番組を見ていてもわかるように、商店街はネタの宝庫です。
- 一風変わったユニークな店
- 町の名物
- 地域で頑張っている人
- 地域のイベント
こういった情報を得られやすい場所なので、商店街を訪れたら近くの店に入ってまずは誰が商店会長かを聞き、真っ先にその人の元に足を運んでいましたね。
で、商店会長からいろんな人を紹介してもらうと。これは鉄板のネタ取り方法です。
例えばぼくが新聞記者として福岡市南区を担当していたとき、商店会長から「近くの池をずっと掃除し続けている熱心な人がいる」と聞いたのでその人の元を訪れて取材、下の記事を書きました。

また、「コスプレ用の衣装を販売してる変わった店があるよ」と聞いてその店を訪問、店長から地域で活動しているアイドルがいる情報をキャッチして下の記事を書きました(ソースが違っていたかも…)。
また、近くの大学が商店街の中に小劇場を作ったニュースも書きました。

「商店街を訪れたら何か拾える」
ぼくはこう考えています。
人が集まる店に情報も集まる
では、どんな種の店を訪問するとネタが拾いやすいか。
ぼくの考えでは「カフェ」と「スナック」。なぜかというと、いろんな人が集まるところに情報も集まると思うからです。
カフェやスナックは他の種の店に比べて客の滞在時間が長いですよね。その間に店舗スタッフと客の間で雑談などが交わされれば、お店の方には自然と地域に関する情報もたまっていきます。
「カフェ」と言っても、スターバックスやドトールなどのチェーン展開しているところではなく、こじんまりとした古くから営業しているところ、常連客が多そうなところをぼくであれば狙います。
実際、タウン誌時代ではカフェの店長が地域活動に力を入れていたり、スナックのママが情報通だったりしました。
中でもスナックにはよく通いましたね。
お店が開くちょっと前、4時過ぎくらいに店を訪れてママに出してもらった大ジョッキのアイスティーを飲みながらよく雑談していました。
政治家
地方ライターはあまりアタックしてないかもしれませんが、ぼくであれば地域の政治家(市議や県議など)とは関係を築いていきたいです。
市議や県議は住民の声を聞いてそれを市政・県政に生かす仕事をしていますから、当然、地域の話題を多く知っています。
一般の人の中には政治家に良くないイメージを抱いている人も多いと思うのですが、政治家の中でも頑張っている人はいて、少なくとも記者として接している限りで言えばいいネタ元になり得ます。
政治家も役所の職員と同じでそのライターがどんな媒体と仕事をしていてどんな情報を出しているかによって対応が変わってくると思いますが、ハマればでかい情報源になります。
しかも、案外、新聞社やテレビ局などの既成メディアの記者が地方政治家と個人的な関係を築いていないケースがあるのでぼくであれば積極的にアプローチしたい。
大学広報
幅広く取材する地方ライターであれば、地域にある大学の動きも追いたいところ。
地方紙があまり目を配っていない地域だと独自ネタもつかめると思います。
ぼくが新聞記者時代に担当していた佐賀市では、佐賀大学をマークしている記者は当時おらず、地方紙も全国紙も大学からの発表を取材して書く程度でした。
「おい庄部、佐賀大がガラ空きなんやから行けよ。ネタ取れるやろ」
総局長に指摘されたことを覚えています。
今から考えれば本当にそうなのですが、当時のぼくは仕事や周囲の人間関係に疲弊していて、記者としての自分にも疑問を感じていたので聞き流していました。
会社の記者はぼくのようにいろんなことが絡み合って心に余裕のない人が少なくないので、ジャンルによっては地方ライターが入り込む余地はあるように感じます。
大学をカバーするとすれば最初は無難に広報に挨拶をして、それから広報の職員や大学ホームページ、ブログ、各種SNSを駆使して気になった大学教授をピックアップして会いに行きます。
こうすることによって、大学が行っている地域活動を押さえられますし、場合によっては教授の研究活動で面白い独自ネタを取れるかもしれません。
「大学教授」と聞くと何だかお堅い印象を抱く人がいるかもしれませんが、ぼくの経験に限れば取材はウェルカムな人が多かったですね。
普段、どちらかというと閉じられた世界にいるからか、取材を受けることをポジティブな刺激だと感じてくれる人もいて、携帯でやり取りする人もいました。
大学ネタでいうと、先に挙げた福岡市南区の井尻商店街に小劇場ができたというニュースは福岡女学院大学の取り組みです。
同大学のネタでいうと、先に添付した地域アイドルもそうですし、また学生が広告営業までしながらフリーペーパーを作っているという記事も書きました。

これも誰かに聞いて知り、取材したものだったと記憶しています。
警察署と消防署の特定課
地域の安全に関わる情報を取材して何らかの媒体に載せたい場合、警察署と消防署は取材先になり得ます。
警察にはいろいろな課があるのでどこに行けばいいのかわかりづらいと思うのですが、県警本部を除く各警察署でいえば「生活安全課」が取材しやすいでしょう。
この課はひったくりや空き巣、振り込め詐欺など住民にとって比較的に身近な犯罪に対する防犯活動を行っている課なので、ぼくがタウン誌で横浜市戸塚区を担当していたときは戸塚署の同課でよく取材させてもらっていました。
一方の消防署でも広報的なポジションの職員はいますから、その人に地域の火災状況や防火に関する情報を教えてもらっていました。
自治会町内会の会長
自治会町内会の会長も情報源になります。
が、ぼくは会社記者時代にさほど懇意にした人がいなかったので念のために書いておいた程度。
地域の暮らしに関する問題などの情報が得られる可能性はあるでしょう。
若者
高齢化が進む中、地域で頑張っている若者や移住者はニューストピックスになりやすいのではないでしょうか。
ぼくも新聞記者時代に「福岡市に住む面白い若者」を切り口に取材していたことがありました。
まずは何らかの方法で特定の若者と知り合い、その人から取材候補を紹介してもらい、つないでいきました。
下の3つの記事はそんなネタの取り方をしていたと思います。
ぼくが書いた記事は上から「ユニークな人形を作る作家」「福岡の経営者を取材し続けるブロガー」「20代前半で自分のブランドを立ち上げた服飾デザイナー」。



また、路上で声をかけて話を聞き、面白そうな人だったら後日取材させてもらうこともしていました。下の路上ダンサーの記事がそうです。

まとめ

医療ネタの探し方を紹介した上の記事にも書きましたが、地方ライターの場合、特に人を数珠のようにつないでいくことがポイントかなと。
世に出ていないニュースが多いので、必然的にネタの探し方はそうなりますね。
あとはGoogleアラートを使って地域ニュースを自動収集しつつ、冒頭に挙げた地域情報が載っている媒体を参考にすること。
それと、「全国の問題を地域に落とし込む」のも王道です。
例えばぼくは2011年に東日本大震災が起こったとき、担当していた横浜市戸塚区で震災支援者や避難者などを毎週、11回にわたって紹介する連載を書きました。
下の記事がその一つです。

行政、経済、医療それぞれで「地域ではどうか」と疑問を浮かべて関係先を取材すればニュースを得られることもあります。
こんなところかなと。
フリーライターの方が自分に向いていると思いますが、会社員記者として自由に取材していたときも楽しかったですね。書きながら何となくいい気持ちになりました。
フリーライターの庄部(@freemediwriter)でした。
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