インタビュー

吃音の美容師が月収100万のWebライターになるまで【成長物語】

Webライターの藤原将さん

クラウドソーシングサービスの普及に伴って爆発的に増えた「Webライター」。

低単価に苦しむ人が多いようですが、兵庫県に住む藤原(ふじはら)将さん(25)は月に50~100万円の収入があるそうです。

藤原さんは元美容師。全く異なる業界の彼がなぜWebライティングの世界に足を踏み入れ、評価を得るようになったのでしょうか。

藤原さんが読者やクライアントを満足させるために行っていること、「高単価ライター」と「低単価ライター」の違いとは。

(取材日2019年10月29日、30日)

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3回目の挑戦で転機「Webライターで年収800万!?」

―まずは、藤原さんがWebライティングの仕事をするようになった経緯をお聞かせください。

専門学校の生徒だった2014年に、副業として始めました。

ぼくはその翌年に美容師として神戸市のある店舗に就職したのですが、美容師の収入が低いことは学生時代から知っていましたから、それを補填する副収入を得たいと考えていたのです。

副業としてはインターネットを使ってできるものを探しました。

ぼくは小学3年のころに自分に吃音症があることに気付いて以来、対面や電話でのコミュニケーションに苦労してきたので、しゃべらなくて済む仕事がいいなと。

たしか、「ネット 副業」などのワードで検索していたと思います。

―その中で、Webライティングの仕事を見つけたと。

はい。厳密にいうとまず見つけたのはパソコンを使ったデータ入力やテープ起こしの仕事でした。副業としてそんな仕事ができることを知り、クラウドワークスに登録したのが始まりです。

クラウドワークスで企業が発注している仕事を見てみると、その中にWebの媒体に記事を書く仕事がありました。

当時のぼくは、「ライター」といえば本や雑誌の記事を書く人をイメージしていたので、今でいう「Webライター」としての仕事があることを知ったのは一つの発見でした。こんな仕事もあるんだなと。

その時はツイッターなどのSNSを使っていなかったので、時勢に疎かったのかもしれません。

とはいえ、そこから本格的に書く仕事に挑戦したわけではなく、最初にやったのはアダルトビデオのタイトルのリライトでした。

動画が正常に再生されるかを確認しつつタイトルの改変を行うというもので、報酬は1件2円。20件やっても40円ですから全くお金になりませんし、クライアントが高圧的だったのでしんどくなってすぐに止めました。

―最初からうまくいったわけではないんですね。書く仕事に挑戦したのはいつですか?

AVの一件があってからだいぶ時間が経った、美容師3年目の2017年10月です。2度目の挑戦のきっかけは、現在の妻と暮らし始めたことです。

それまでは実家住まいだったので問題なかったのですが、同棲するようになってからぼくの収入の少なさが生活に影響するようになりました。

それで、クラウドソーシングサービスの利用を再開したのですが、今度も早々に1カ月で挫折しました。簡単にいうと、稼げませんでした。

その後は美容師として働く傍ら、週に3日は夜にキャバクラの店員と工場でのアルバイトを入れました。

当時の美容師の収入が月に11万円で、2つの仕事を加えてもトータルで15万円前後。収入が低い状況は変わりませんでした。

―それで、またクラウドソーシングサービスに目が向いたと。

はい。美容師の仕事を終えて家に帰り着くのが夜の9時頃だったので、その後にWebライティングの仕事をしようと3度目の挑戦を試みました。2018年の春のことです。

振り返ってみると、この時に「転機」と呼べる出来事がありました。クラウドソーシングサービスを使ったWebライティングで、年収800万円ほどを稼いでいる女性ライターの存在を知ったのです。

クラウドソーシングサービスを展開している企業のホームページに掲載されていたインタビュー記事だったと思います。

その人もぼくと同じように最初は低単価の仕事ばかりを請けていて稼げなかったそうですが、専門性を高めていったところ単価が上がり、収入が伸びたといいます。

目からウロコでした。「専門性が大事」とは今では普通に言われていることですが、案外、「考えれば当たり前なこと」は誰かに言われてみないと分からないものです。

「誰でも書ける記事を書き続けてはダメだ。専門性を高めてライターとしての価値を上げる必要がある」。そう思いました。

文章力は顧客とのコミュニケーションでも武器に

―そこから風向きが変わっていったのでしょうか。

そうですね。自分が興味を持っていて、単価も低くはないジャンルとして「株式投資」「不動産投資」「太陽光発電」の3つに絞り、集中的に仕事をこなしていきました

ネットだけではなく本も読んで知識を増やし、さらにお金を払って業界に詳しい人にチャットで取材をさせてもらいました。吃音があるぼくは対面や電話を通した取材は難しいだろうと考えたためです。

こんな風にして仕事と勉強を同時並行で進め、文章の質にこだわって書き続けていったほか、文章以外でも読者とクライアントの満足度を高める工夫をしました。その一つが、記事全体のデザインです。

具体的には、文章が続きすぎる場合に、箇条書きや表・イラストを挿入することで見栄えを良くするようにしました

例えば、太陽光パネルを設置した際、太陽光の反射がまぶしくて近隣トラブルが起こる可能性があります。そのことを説明するときに、素人でもグラフィックデザインを作れる無料ソフト「Canva」を使って太陽と住宅と太陽光パネルの絵を作り、太陽光がパネルに当たって反射する様子を表現しました。

―「記事全体をデザインする」という考え方は共感します。ほかに仕事で重視したことはありますか。

クライアントとのコミュニケーションを丁寧に行うようにしました。

Webライターはクライアントと対面でのやり取りが生じない分、クライアントからすれば相手を切るのは簡単だと思います。

やはり、顔を会わせることで親近感が沸いたり信頼関係を築きやすくなったりすることはあるだろうと。

その一方で、遠隔的なやり取りの場合、相手との連絡が一度断たれれば復活させることは難しい。

だからこそ、ぼくはクライアントに自分の原稿の意図や思いをしっかりと書くようにしています。

ただ、このときに注意が必要なのは「丁寧」と「冗長」は違うこと。自分の考えを伝えたいからといって文章がダラダラと続いていればそれは逆に相手のストレスになってしまうので、なるべく端的にまとめることがポイントです。

ライターにとって重要な文章力は、何も原稿にだけ発揮されるのではありません。クライアントと意思疎通を図る際にも有効な武器になります。

ぼくは今年の2月からライターへの指示だしや校正などを行うディレクターの仕事もさせてもらっていますが、メールでのコミュニケーションがしっかりしている人は記事の質も高い傾向にあると感じています。

―そうしたことを意識して続けていった結果、収入はどう変わっていったのでしょう。

3度目の挑戦を試みた2018年春の時点では文字単価が0.1~0.4円でしたが、10倍以上の4~6円になりました。過去の最高単価は10円です。

ぼくは春以降の状況から、「これはWebライターとしていけるのでは」と思い、美容師を辞めて2018 年7月に独立したのですが、月収は独立3カ月目で20万円を超え、11月には50万円を、2019年4月には100万円を超えました

―経済的な評価も得られたのですね。クライアントの変遷についてはどうでしょう。

独立してから今までに仕事をご一緒した会社は10~15社で、今は常に3~5社と仕事をしています。3社まで減ったら1社探そうかなという感じです。

Webライティングを再開した当初に比べると、クライアントの質もいい意味で変わりました。

予算がないにも関わらず勢いでオウンドメディアを立ち上げた企業と、戦略的に広報を考えている上場企業とではライターへの対応は違うものです。

例えば、ぼくが原稿に関して「こうした方がいいんじゃないか」という考えを提案しても、前者の企業では知識が乏しく意識の低い人が多いので、「ルールから逸脱しないように」と一方的に指示されることが目立ちました。

その一方で、後者の企業ではぼくの提案がルールとは少しズレていたとしても、臨機応変に考えてくれて、ぼくの提案をいいと思えば採用してくれることがありました。

これはうれしかったですね。「本当にいいものを作るために」という同じ目的を持って一緒に仕事ができている感覚を得られるのは、孤独に陥りがちなWebライターにとっては大きな喜びです。

総じて、規模の大きな企業の方が自分の頭で考えてくれる担当者が多いような気がします。

ですから、ライターを“駒”とみなして画一的な対応を求める企業との仕事や、「この仕事はどうなんだろう」と疑問に思う案件は減らしていきました。

Webライティングを再開した当時から現在も仕事しているクライアントはいません。

高単価ライターは事業者意識があり、努力基準が高い

Webライターの藤原将さん
―藤原さんはいわゆる「稼げるWebライター」になったそうですが、そんなライターと低単価に留まるライターの違いは何だと思いますか?

個人的な考えですが、「事業者意識があるかどうか」と「努力の基準が高いこと」の2つは大きな違いではないかと思います。

事業者意識というのは、自分の仕事で自分が満足できて、かつ顧客を喜ばせられるかどうかを重視する意識を意味します。

事業者意識があれば、先ほどぼくが話したような表やイラストの挿入、クライアントへの提案などは自然に行うことではないかと。

単に与えられた条件をクリアするためにネットから素材を探してばらばらとつないでいくのは労働者意識による仕事だとぼくは思います。時給単価を意識しすぎるのも同様です。

努力の基準が高いことも言えそうです。

ぼくの印象ですが、高収入のライターはやはり継続して勉強を続けていて、PDCAをうまく回しているように思います。「努力することが普通」になっているのではないでしょうか。

―藤原さんがクライアントに評価された理由は今までお聞きしたホスピタリティーの面だけではなく、文章力もあると思います。

そもそも、Webライティングを始めた時点である程度書けていたのではないかと。「3度目の挑戦」の前の2018年1月のブログ記事を読んでそう思いました。

ありがとうございます。ぼく自身、自分の文章がすごく上手だとは思っていないのですが、クライアントからは「読みやすい」「主張と根拠が分かりやすい」「他のライターと比べて手を入れる所が少ない」と評価していただいています。

大変恥ずかしいのですが、実は高校2年のころから就職するまで小説を書いていました

きっかけとなったのは、村上春樹さんの『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだことです。この小説は現実と登場人物の深層意識の二つの軸で構成されていて、人間の存在を問うものでした。

ブログにも書きましたが(上記事)、ぼくは小学生のころから吃音に悩み、人とうまく付き合うことができませんでした。

自分の心を長く閉ざしていたわけですが、でもその分、よく考えていたように思います。自分はなぜ生きているのか、なぜ存在しているのか。

『世界の終り~』はそんな自分を突きつけられる作品でした。もしかしたら小説のように、現実とは別の世界があるのかもしれないと思うようになりました。

吃音でうまく話せない、人から白い目で見られる醜い自分がいる現実とは別の、存在としての精神的な世界があるのではないかと。そんなことを小説に表現してみたいと考えたのです。

就職するまでに15~20本ほどを書いたので、もしかしたらその経験がWebライティングに生きているのかもしれません。

「生きがいは妻」文章は食べていくための手段

―ブログやお話での印象から、Webライティングとの出合いは藤原さんの人生にとって非常に大きなものだったのではないでしょうか。

文章で生活できることが分かったときの衝撃はどうだったのでしょう。

うれしいことでした。ぼくは小説家に憧れていたので、文章という同じ手段で食べていけるのはとても尊いことだと思っています。

ただ、「文章で食べていくこと」に固執しているわけではありません。

これもちょっと恥ずかしいのですが、ぼくの生きがいは、妻と日々を過ごすことです。

ぼくは吃音で悩んだり、美容師の職場でいじめを受けたりしたこともあって、自分が生きる理由を見出せませんでした。そんなぼくの生きがいになってくれているのが、妻です。

苦手な客商売であるキャバクラの店員をしたり、工場でのアルバイトをしたりしたのは、妻との生活を成り立たせるため。そのためであれば嫌なことも乗り越えられると思ってのことでした。

ですから、Webライティングの仕事を再開したのは人と話さなくていいことを最も重視したわけではなく、あくまでも経済的に食べていくための選択肢の一つでした。

―そうでしたか…。最後にお聞きしたいのが、Webライターの仕事の意義です。

ぼくは本やネットのリライトは引用元の情報を薄めたり歪めたりする可能性があり、さらに一次・二次情報が詰まったいい記事を埋もれさせる可能性を高めると考えています。

「ネットにゴミを出している」という意見を目にしたこともあります。こういった考えについて藤原さんはどう思いますか。

おっしゃることは分かります。ネットにゴミを出す可能性があることも。Webライターの仕事はときに読者のためにならないことがあるかもしれません。

しかしながら、Webライターは企業の役に立てる存在にはなれると思うのです。企業の集客をお手伝いすることはできると。

―なるほど。Webライターはどう自分の仕事に胸を張れるのだろうと考えたのですが、「企業をPRする広告ライター」だと割り切るのは一つの手かもしれませんね。

ただ、そのときは企業の見極めが重要になってくると思います。

社会的なニーズが高かったり、多くの人を喜ばせる可能性があったり、そして何より自分が応援したいと思えるような企業をクライアントに持つことによって、Webライターはやりがいを高められるのではないか、と思いました

非常に参考になる話を聞かせていただき、ありがとうございました。楽しかったです。

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