「えっ、そんなに出会えるもんなんですか?」
2018年1月25日夜、横浜市の激安定食屋(アジフライ定食500円)。
取材場所が会社員時代の職場から近かったため、当時の先輩(以下、コウさん)を誘って飲んでいた。
コウさん(37歳)は仕事一筋の男で、わたしが働いていた11年前当時から浮いた話をとんと聞いたことがなかった。
だから会ったときには、彼女ができたかどうかを冗談交じりに聞くのが仲間内での慣例になっていた。
しかし、その時は展開が違った。
すました顔をしながらも前のめりで彼が語ったのが、彼女ができて別れたこと。
ここまででも十分に意外だったのだが、さらに興味深いネタがあった。
前の彼女と出会うきっかけが婚活サイトだったこと、そのサイトを使って2カ月の間に20人と出会ったこと。
同じマッチングサービスの一つである街コンにわたしは足しげく参加していた時期があり、街コンをきっかけに彼女ができたり、妻(元)ができたりした。
しかし、婚活サイトを使ったことはない。
4月3日、再びコウさんに時間を取ってもらい、「本当に使える」という婚活サイトの利用体験について取材させてもらった。
※この取材はコウさんが婚活サイトを利用した当時を振り返ってもらったものです。時間の経過によってサービス内容などが変わる可能性があること、ご了承ください。
本当に使える婚活サイト「ブライダルネット」とは
コウさんが使った婚活サイトは「ブライダルネット 」。簡単に紹介しておこう。
サイトを運営する会社「株式会社IBJ」は2006年に設立。婚活サイト以外に結婚相談所の運営やお見合いパーティー、合コンを開催する事業も展開している。
ブライダルネットは有料制で、費用は利用する期間によって異なる。1カ月で3980円、3カ月で3200円、6カ月で2600円だ。
会員になると異性の写真やプロフィールなどを見ながら自分の希望に近い人を探すことができ、「マッチング」すると、その人とメッセージのやり取りができる。
「鮮明な顔写真」がウリの一つで、顔のわかりにくい写真は掲載NGにしているそうだ。
ブライダルネットにはプロフィール以外に日記をつける機能も備わっており、日記によって自分の人となりを伝えられるようになっている。
また、「映画好き」「旅行好き」といったコミュニティに参加することもでき、コミュニティ内での投稿も可能。
他の会員と同じコミュニティに属していると、お互いのプロフィールに「共通点」として表示される。
では、コウさんはブライダルネットをどんなふうに利用して20人もの女性と出会ったのだろうか。
マッチングするとメッセージ交換ができる
―じゃ、取材ってことで、よろしくお願いします。20人と出会えたって聞きましたけど、すごいですよね。具体的にいつからいつまで利用して、どんな女性と出会ったんですか?
利用したのはおととし(2016年)の7月から10月までかな、いや、11月までやってたかも。4、5カ月間だね。
リアルに出会い始めたのが8月からで、8、9月の2カ月間で集中的に会った。
(会った人の)ほとんどは俺の自宅や職場から近い横浜市の人で、中には相模原市の人もいたね。年齢は30から45歳。
―相手を探す時は条件を指定して検索ができるってことなんですかね。
そう。プロフィールに書かれている項目で条件検索ができて、例えば「出身地」や「在住」「学歴」「年収」「血液型」とか。
条件検索は選択式で、「学歴」をクリックすると「高卒」とか「大卒」とかって風に細分化される。
俺の場合は広く探したかったから、条件は「神奈川在住、30~35歳、写真あり」。写真じゃなくてイラストを載せてた人もいたからね。
住んでるところは県レベルでしか探せなかったんだけど、プロフィールに市区町村まで書かれてることが多かったから、横浜市まで絞り込めたわけ。
―条件に合う人が見つかってからはどうアプローチを?
ブライダルネットって、気になった人がいたら「あいさつ」を送ることができるんだよ。
「私はあなたのことが気になっています」っていう意思表示で、相手のプロフ画面にある「あいさつ」アイコンを押すと、その人に通知される仕組み。
で、相手からも同じようにあいさつが返されたら「マッチングした」とみなされて、個人的なメッセージのやり取りができるようになる。
やり取りの画面はLINEをイメージすればわかりやすいんじゃない?
あいさつできるのは1日20人まで。
マッチング率は「1割」 600人にあいさつ送る
―リアルじゃない、サービス上でのやり取りは何人くらいとしました?
会った20人の3倍くらいだから、60人とはしてたと思うけど。
俺の場合、マッチングが成立するのは10人に1人くらいだったから、トータルで600人くらいにあいさつを出したことになるね。
さっき挙げた条件でもこれだけたくさんの人が登録してるってことは言える。
―600人ですか、まあ、そんなもんですよね。ぼくも街コン体験のブログ記事に書きましたけど、やっぱ数を打つ必要があるわけで。会う時は仕事終わりとか休日とか? どんな場所で会いました?
会ったのは平日や休日の夜7時とか8時とか。昼に喫茶店とかで合った人も何人か。そこは相手の都合に合わせて。
一番よく使ってた店は関内(横浜市)にある個室居酒屋。個室だとちゃんと話せるし、俺は酒が飲めないけど好きな人なら(酒を)頼めるし。
でも今考えると、初対面で個室ってのは良くないよね。密室だから緊張して話しにくいと感じる人がいたかもしんないし、なんかエロいと思われたかもしんないし。
まあ、それでも向こうは来てくれたわけだから。
―20人のうち、会った回数が2回以上の人は何人いました? 結果、ある一人の女の人と付き合ったわけなんですよね。
7、8割は1度で終わり。俺がもう一度会おうと思わなかったケースもあるし、その逆もあるし。2回会ったのは5人くらいで、3回以上会ったのが付き合った人。
(2016年の)12月に付き合って去年の10月に別れたから、11カ月間付き合ってた。
一喜一憂しない「反応があればラッキー」のスタンス
―その人と別れたとはいえ、マッチングサービスとしては使えるものだったわけですよね。改めて「サービスの良かった点」って聞かれると何になりますか?
いいサービスだと思うよ。
まずはちゃんとした人がいるってことかな。会員登録するためには免許証とか保険証、パスポートとか自分の身分がわかるものを提出しないといけないから。
あとは当たり前のことだけど、登録者が多くてちゃんと出会えること。
相手からメッセージが届いた時にアイコンにバッジが表示されるとか、スマホでも扱いやすかったことも挙げられる。
―逆に、使いにくいところや「ここはこうした方が」ってところはありました?
何かあるかな…。
あえて言えば、メッセージのやり取りについて回数は無制限なんだげど、期間が1週間に限られていたこと。
順調にやり取りが続いていてこっちが「会いましょう」って誘ったのに、期限が迫っていて返信がないまま終わったことがたまにあったから。
向こうからすれば、返事をしようとしたのにうっかりして「あっ、期限切れちゃった…」ってことがあったかも。
まあ、でもそれは「1週間でケリをつけましょうね」って話で、使いにくさとか改善してほしいとかって思うほどのことじゃない。
―サービスのポテンシャル以外に、何で「ちゃんと出会えた」と思います?
本気でサービスを使おうと思ったからじゃない? 当たり前だけど単に登録するだけじゃ出会えないからさ。
俺はあいさつをしても返ってこないのが普通だと思ってたから、1日に上限の20人にあいさつを送ったこともあるし、それなりに自分でできることはやってたと思う。
自分で日記を書いていればリアクションしてもらえることもあるし、逆に自分から人の日記に反応したりもしてたし。
そんなことをしていれば「ああ、この人はコミュニケーションが取れる人なんだな」って思われやすいでしょ。
自分がやったことには必ず反応があるものと思ってたり、あいさつが返って来ないことで一喜一憂してたりしたら疲れるんじゃない?
反応が返ってくればラッキーってくらいのスタンスがいいとは思う。
お見合いパーティーよりマッチング率は高い
―なるほど。受け身にならずに自分でやれることをやるってことが大事だと。そもそも、出会いのきっかけとして何で婚活サイトを使おうと思ったんですか?
元々はお見合いパーティーによく行ってたんだよね。30歳ころと34、5歳のころに。
自分でもいい年だと思ってたし、遊びじゃなくて結婚につながる出会いをしたいと思ってたわけ。
ただ、マッチング率が低いわけよ、お見合いパーティーは。
俺は大手の「エクシオ」ってとこを使ってて、ざっくりとどんな感じかと言うと、開催場所は例えば横浜駅そばのビルのワンフロアで、会場にずらっとイスが並んでる。
男女10~15人ずつが向かい合って座って、紙にプロフィールを書いてそれを見せ合いながら2,3分ほど話す。
俺は趣味がマラソンだから「マラソンがお好きなんですね」とか言われるわけ。
そんなやり取りを異性の全員として一巡した後にフリータイム。フリータイムは自分がいいなと思った人に話しかけられる機会で、3分を3回くらい。
最後に参加者がいいなと思った人を5、6人紙に書いて投票して、業者がマッチングした組を紹介して終わり。
時間は90分だけど、フリータイムの前のプロフィールのやり取りを一巡するのに半分かそれ以上割かれる。
男性は参加費が5000円から6000円くらいで、女性の場合は無料か、かかっても500円とかじゃなかったかな。
―確かにその形だと正式なマッチングが少なくなりますよね。仮に正式なマッチングが成立しなかったとしても、LINE交換して後でアプローチするって方法も考えられそうですけど、それはできなかったんですか?
ぼくが街コンに参加したときはとにかくLINE交換してアプローチリストを作ることを最優先してました。
どうだったっけ。その場でLINEの交換をしてる人はいなかった感じ。少なくとも俺はしてないな。
ただ「メッセージカード」なるものにアドレスを書いて渡すことはできたよ。
結婚相談所は「重い」 ブライダルネットはいい温度感
―うーん、何だか全体的にやり方が古いですね。で、お見合いパーティーは見限ろうと。どうやってブライダルネットに辿り着きました?
いや、まずはエクシオじゃない他の業者がやってるお見合いパーティーに参加してみようと思って、それで参加したのがブライダルネットの運営会社が開催したやつだったんだよ。
で、参加後にメールで「こんなサービス(婚活サイト)もありますよ」と知らされた。
―なるほど。マッチングサービスとしては結婚相談所もありますけど、それは使わなかった?
結婚相談所はなんか重くて。
結婚相談所だと月に1万とか3万とか払うでしょ、確か月額固定だったと思うんだけど、女性もそれなりの額を払ってるわけでさ。
身勝手と言われればそれまでだけど、自分のテンションを超える本気さで来られると引いちゃうって気持ちがあったのは正直なところ。
―その一方で、お見合いパーティーで女性が払う費用はすごい安いわけですよね。
そう。だからお見合いパーティーは逆にやる気のない人が多いんじゃないかと思ったんだよね。
で、ちょうどいい費用感と温度感だったのがブライダルネット。
ブライダルネットは月額3000円(当時)で高すぎないし、かと言って女性もそれなりの額を払うわけだから、「結婚を望んではいるけれど、ガチ過ぎない」って人が多いんじゃないかなと。
―その感覚、面白いですね。でもわかる気がする。じゃあ、「婚活サイトは主体性があれば良いサービスですよ」って総括でいいですか?
そうだけど、周囲が婚活サイトを経由した出会いに対してどう思うかは気になったよ。いわゆる世間の目ってやつ。
俺の周りにはガチで否定する人はいなかったけど、「友達の紹介」とか「合コンで出会いました」とかの方が自然に思ってくれるじゃん。
中には婚活サイトを「出会い系」だと誤解している人もいて、出会い系って言われるとかなりイメージが悪いよね。
―婚活サイトも文字的に出会い系っちゃあ出会い系だと思いますけど、コウさんにとっての出会い系ってどんなイメージ?
サクラがいたり、ヤリ目だったり。
そのくくりにこれ(ブライダルネット)が入れられるのは心外。違うよ、とは言いたい。
―おお、何かいい感じの締めですね。さすが取材者の気持ちがわかる。めっちゃ面白かったです。きょうはありがとうございました。