「取材はやっぱり対面がいい。オンライン取材はなんだか気が進まない…」「初めてオンライン取材を行うのだけどちょっと不安。ポイントや注意点を知っておきたい」
今回は、こんなモヤっとした思いを抱えている人に向けて、日常的にオンライン取材を行っているフリーライターのショウブ(@freemediwriter)が、メリットと注意点を伝えたいと思います。
2020年春から世界的に流行を続ける新型コロナウイルス感染症の影響により、さまざまな仕事がオンラインで行われるようになりました。
記者やライターもその影響下にありますが、「オンライン取材」という選択肢が定着したことは、この業界にとって一種の革命だとわたしは感じています。
細かく見ると取材の質が落ちる可能性があり、留意しないといけないことはありますが、「ライター業の可能性を広げる」点でオンライン取材はとても有効でしょう。
アフターコロナ後もオンライン取材は取材方法の一つとして機能し続けると思われるため、同業の人はオンライン取材の意義やメリット、注意点を自分なりに整理しておくといいかもしれません。
オンライン取材のメリット
「場所」「時間」「人」の制限が減る
オンライン取材の最大のメリットは、対面取材における3つの制限が緩和されることだとわたしは考えます。3つの制限とは、「場所」「時間」「人」です。
対面取材では、予算の関係から取材場所が限定されやすいですが、オンライン取材では交通の便の悪いへき地や離島を含めた全国各地、ひいては海外も対象になります。
また、対面取材では移動に時間がかかるため、取材開始と終了の時刻が制限されやすい一方、オンライン取材は移動しなくていいため、時間の選択肢が広がります。
場所と時間の制限が減れば、自然と取材先の候補も増えやすくなります。
お金がかからない
そのうえ、オンライン取材でかかる費用はパソコンの通信費や照明の電気代くらいのものですから、交通費や宿泊費がかかる対面取材に比べ、お金がかかりません。
仕事の効率が高まる
移動にかかる時間を他の仕事に充てられるため、仕事の効率が高まることも利点の一つでしょう。
移動中に取材の予習やシミュレーションをするライターにとっては必ずしもイコールでつながらないかもしれませんが、メリットと感じる人は少なくないと思われます。
「場所」「時間」「人」の制限が緩和され、お金がかからず、人によっては仕事の効率が高まる
記者やライターは、オンライン取材によってこれらの大きなメリットを享受できるようになったわけです。
「引け目がない」心的メリットも
即物的に考えれば利点は先に挙げた通りですが、わたしは「心理的なメリットも大きい」と考えています。
それは、オンライン取材を選択肢の一つとして取材先に提案することに、「手を抜いている」「怠けている」といった引け目を感じなくて済むようになったことです。
わたしの場合、コロナが流行する前までの基本的な取材方法は「対面」か「電話」の2つであり、ファーストチョイスは対面でした。
「記者やライターたるもの、人に会って話を聞くべき」
わたしのような考えを持つ同業者は多かったでしょうし、取材先の中にもこう考える人が少なくなかったかもしれません。
それが今、時代の要請によってオンライン取材の価値が高まり、対面取材と同等に位置付けられるようになったとわたしは感じています。
ビデオ通話サービス「Zoom(ズーム)」などを使った仕事上のやり取りが増え、オンライン取材もごく自然に行われるようになりました。
以前も同サービスのスカイプなどを使えばオンライン取材はできていたわけですが、遠隔で仕事をする文化が人々に浸透していなかったため、多くの人が使う共通のツールがありませんでした。
「共有する文化とツールの欠如」の点から、取材をする側、取材を受ける側ともにオンライン(ビデオ通話)という手段は現実味に欠けていたわけです。
それが、コロナの流行で変わりました。
「ズームで取材を」という提案が双方に違和感なく行われるようになったことは画期的と言えるでしょう。
取材先がリラックスできることも
対面診療よりもオンライン診療の方が「相談しやすい」と感じている患者さんが少なくないかもしれません
わたしが過去に取材した医師の中で、こう話していた人がいました。その人は下のように続けていました。
「画面越し」という物理的な距離感が良い影響を与えているのか、対面よりも緊張せずにフラットにお話しになる患者さんが多い印象です。
対面診療では患者さんが自らの症状に焦点を絞って話されることが多いのですが、オンラインだとその症状が起きた経緯も丁寧に話す傾向があるんですね。
オンライン取材も同様に、取材先が対面よりもリラックスして話しているとみられるケースがあります。
理由は先述の医師と同じで、対面に比べ、1つの質問に対する取材先の発言の量が多いと感じることがあるためです。
目の前に生身の人間がいないことで、相手の細かな反応を気にせず自分の考えを話せるのかもしれません。
オンライン取材の注意点
- 細かな質問がしづらい
- フリーズで取材が中断してしまうことがある
- 良い写真が入手しづらい
- 対面より緊張してしまう人も
一方、オンライン取材を行う上では「こんな可能性がある」と胸に留めておいた方がいいと思うこともあります。
それぞれ、説明していきますね。
細かな質問がしづらい
オンライン取材は対面に比べ、自分の反応が相手に届くまでに若干のタイムラグがあります。
その結果、相手が話している最中に気になったことを聞こうとしても相手が話し続けていて、場合によっては会話がちぐはぐになってしまうことがあります。
対面では細部に関する質問を要所要所でスピーディーにできますが、オンラインで同じことをしようとすると円滑に進まなくなってしまう可能性があるのですよね。
こうした特徴を実感してから、わたしは相手が話し終わるのを待ってからまとめて複数の質問をするようにしました。
細かな質問は忘れやすいので対面ではその場で聞くようにしているのですが、オンライン取材では気になったことをしっかりメモしつつ、それを忘れずに回収していく工夫が求められるように思います。
フリーズで取材中断も
タイムラグに留まらず、システムがフリーズして取材が中断してしまうこともありました。
今のところ5分も経たずに再開できていますが、場合によっては互いにサービスを閉じてから入り直すことが必要になるかもしれません。
最悪の場合はビデオ通話を諦め、電話取材に切り替えなくてはいけないこともあり得るのではないでしょうか。
良い写真が入手しづらい
これも、オンライン取材のデメリットになり得る点です。
取材先の写真を記事に掲載する場合、基本的に対面取材ではライターやカメラマンが撮影しますが、オンライン取材ではそれができません。
画面をキャプチャーしたり、取材先から写真データを提供してもらったりする必要があるため、取材先の表情や画質などを総合的に考えると、「良い写真」を入手できる可能性は低くなるとわたしは考えます。
わたしとしては写真データを送ってもらえるだけでもありがたいことですから、先方に細かいお願いはしていません。
「これはもう、仕方がないもの」と捉えています。
対面より緊張してしまう人も
オンラインの方がリラックスできる人がいれば、逆に緊張しやすい人もいるのではないでしょうか。
わたしはまだそれを感じ取れるような出来事を経験していませんが、想像には難くありません。
- 対面以上に笑顔や相づちを心がける
- 対面以上に声を大きくし、ゆっくり話す
- 話し足りないこと、強調したいことを最後に改めて聞く
「ちょっと緊張されているのかな?」と感じられる人には、一層、上のようなことを意識する必要があるかもしれませんね。
まとめ
オンライン取材はライター業の可能性を高める有効な方法
わたしがこう考える理由やオンライン取材の留意点を書きました。
今回は取材者と取材対象者がそれぞれ一人であることを前提に書きましたが、活動拠点が違う複数の人たちの座談会を企画し、その模様をレポートしやすいこともオンライン取材のメリットと言えるでしょう。
わたしは、対面取材の方が好きです。
移動し、見知らぬ土地を歩き、初めて会う人といろんなことを話す。
対面取材が包含する要素が最も楽しいことに今も変わりはありませんが、オンラインも有効に組み込みつつ、今後もライターの仕事を続けていこうと思います。
フリーライターの庄部でした。
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