ジブリアニメ『千と千尋の神隠し』の舞台になったー。
群馬県中之条町にある老舗旅館「積善館」はそう言われていますが、果たして本当なのでしょうか。
旅館に泊まってスタッフに聞いたら意外な事実がわかりました。
インターネット上ではどうしてもこの話が挙がりがちである一方、積善館はまず、旅館そのものがとても変わっていて面白いのですよね。
まるで異世界にトリップしたかのような館内で、映画の世界観とも近いのです。
この記事では、フリーライターのショウブ(@freemediwriter)が旅館の面白さを案内するとともに、噂の真偽に迫ってみます。
積善館の良かったポイントは主に3つ。
- 歩くだけで楽しい迷路のような館内
- 親しみやすいスタッフの接遇
- 幻想的な温泉
それぞれを見ながら、『千と千尋の神隠し』の舞台と言われるようになった経緯も紹介していきます。
まるで洞窟 積善館の通路
すごくインパクトがありますよね。
これは「浪漫のトンネル」と呼ばれる館内通路。
異世界に導かれそうな雰囲気が漂っていて、『千と千尋の神隠し』の冒頭で千尋の家族が通った神々の世界に続くトンネルを彷彿とさせます。
積善館は傾斜地に建っていて、高いところから降るように「佳松亭」「山荘」「本館」と3つの建物が並んでいます。
写真の通り、全ての建物を合わせて6階まであり、総合フロントがあるのは5階の佳松亭。
そこから山荘に行くためにエレベーターを使い、山荘から本館に行くためにまた別のエレベーターを使う必要があります。このエレベーターから本館の館内通路をつないでいるのが浪漫のトンネルなのです。
ちょっと入り組んだ構造になっているんですね。
傾斜地に建っていて、総合フロントが1階でなく5階にあること。別の宿泊施設に行くためにそれぞれ違うエレベーターを利用する必要があることで、自分が今どこにいるのかがわからなくなり、まるで迷路に入り込んだような錯覚を起こします。
親しみやすいスタッフの接遇
ちょっと堅苦しくてマニュアルの棒読み。
失礼ながら旅館の接遇にはそんな印象を受けていましたが、積善館のそれは距離が近くて親しみやすいものでした。
部屋や料理の案内などで担当してくれた3人は32歳のわたしよりもみんな若く、20代半ばくらい。
積善館の特徴や由来、『千と千尋の神隠し』との関わりなど、本当にざっくばらんに語ってくれました。
特に、千と千尋との関わりについては旅館としてはあまり語りたがらないことかなと思っていましたが、そんなことは全くなく、むしろ前のめり(笑)。
アニメに絡めたツアーを企画したこともあるそうで、経営サイドが商売上手なんだろうと感じました。
積善館と千と千尋の関わり
宮崎監督が訪れたのは実は制作後だった
「千と千尋 積善館」でグーグル検索をして出た2ページ以内のサイトやブログを全て読んだところ、書かれていたのは主に「千と千尋のモデルになった」「宮崎駿監督が制作前に泊まった」の2点でした。
「これは本当ですか?」
部屋を案内してくれたお兄さんや料理の説明をしてくれたお姉さんに雑談をしながら聞いてみたところ、意外なことがわかりました。
スタッフさん曰く、
- 宮崎駿監督は確かに旅館に泊まったが、それは制作前ではなく実は制作後だった(どの部屋に泊まったかも教えてもらいました)
- 宮崎監督は女優・吉永小百合さんのファン。彼女が出演した映画『天国の駅』に積善館が登場していたので、映画の中からインスピレーションを受けて千と千尋の制作に生かしたのではないか
と、こう話されていました。
ネット情報とは違いますね。
ただ、注意しないといけないのは、スタッフさんも「オーナーがそう言っていた」と伝聞形で話していたことです。
宮崎監督が「制作前に泊まった」とするネット情報はソースが明示されていないので、わたしが聞いた情報の方がやや確度が高いのではないでしょうか。
ネットに出ていない情報を知れるのはライターとして興奮しましたね。後で「吉永小百合」を絡めて検索したら、②のことを書いているブログはありました。
館内に掲示されていた、吉永さんが積善館を訪れた時の写真です。
珍しい横開きの雪見障子がアニメと一致
こんなことを気さくに話してくれたスタッフさん。
感動したのは夕食の説明をしてくれたお姉さんの対応で、わたしが『千と千尋の神隠し』との関わりを聞いた後に一旦席を離れ、紙袋のようなものを持って戻ってきました。
取り出したのは2枚のポストカード。
「それぞれの雪見障子を見てください。雪見障子は上下にスライドするものが一般的ですが、当館のものは珍しく、左右に開くタイプ。映画で出ているものも同じなんですよ」
上の2つはポストカードを撮影したものですが、本当ですね。
雪見障子とは、障子の一部にガラスがはめ込まれていて、障子を閉めても外の風景を見られるようになっているものです。
お姉さんはにこりと笑いながら、「良かったらどうぞ」とポストカードをくれたのでした。
湯気が漂う幻想的な元禄の湯
そしてこちらが積善館自慢の元禄の湯です。
外から差し込む日の光が湯気の輪郭を浮き上がらせ、幻想的な雰囲気を演出していますね。
床がタイル張りで窓がアーチ状と洋風な造りです。
ジブリアニメとの関わりに執心していましたが、そもそも積善館は4万もの病を治すことから命名された、「四万(しま)温泉」のある旅館。
四万温泉は中でも胃腸の病気に効くと言われていて、宮城県の「峩々(がが)温泉」、大分県の「湯平温泉」に並び、「三大胃腸病の湯」とされているそうです。
温泉の湯は飲むことができて、同館によると、熱いまま飲むと下痢に、冷まして飲むと便秘に効果があるそう。
四万温泉は1954年(昭和29年)に日本初の国民保養温泉に指定されました。
いやあ、気持ち良かったですね。
青くさびた蛇口、ほら穴のようなサウナと、なかなかに味のある温泉でした。
積善館の外観、内観、部屋の様子
最後に、建物の外観や内観、部屋の様子も写真で紹介します。
料理もおいしかったですよ。山の中にある旅館ですが、魚の刺身がおいしかったですね。
宿泊代は夕食時に別途注文した酒代を含めて1万7000円ほどでした。
以上、フリーライターの庄部がレポートしました。
外観
館内
料理
記事内の情報、考え、感情は書いた時点のものです。
記事の更新情報はツイッター(@freemediwriter)でお知らせします。