「文章が上手くなりたい」「でも、ウェブメディアやSNSの普及であちこちで文章を目にするなか、どんな媒体を習慣的に読むとその目的が叶えられやすいんだろう」
今回はこんな疑問や関心がある人に向けて、記者・ライター歴14年のショウブ(@freemediwriter)が持論を語ります。
冒頭の通り今ではいろんな人がいろんな文章をいろんな媒体に書いていますが、「商業ライターとして得た情報をわかりやすく読みやすく伝えたい人」であれば、読んだ方がいいメディアの優先順位は下の通りだと考えます。
- 新聞
- 週刊誌と雑誌
- 小説
逆に、優先順位として低いもの、時間がなければ読まなくていいものは
- 純粋なウェブメディア(紙媒体が関わらないもの)
- SNS
だと思います。
わたしの場合、1日に読む媒体の割合は「新聞」と「小説」が5:5で、日によってはこれに週刊誌が入り、4:4:2くらいになります。
考えの理由を書きますね。
新聞を最優先に挙げている理由
- 情報が簡潔にまとまっている
- 情報の優先順位を考えて書かれている
- 完読性を高めるために工夫されている
新聞を最優先する理由は上の通りです。
ライターの仕事の一つは、「文章を通して、読者が今までに知らなかったことをなるべくストレスなく知ってもらうこと」だと思います。
小説や詩など創造性の高いものは、書き手が意図するしないを問わず「刺激」や「感動」など何らかの情緒的な効果をもたらすと思いますが、商業的な文章においては情報をスムーズに届けることが第一目的だと私は考えます。
その上で、難しそうなことを最も簡潔に書いている媒体が新聞だと思うんですね。
新聞は紙である性質上、あらかじめ文章量が短く定められています。
速報記事やルポルタージュ、人物紹介などジャンルによって長短はありますが、情報が取捨選択され、必要なことからコンパクトに書かれていることが大きな特長です。
同じ紙媒体であっても、週刊誌や雑誌の特集記事は2~4ページの紙幅が割かれますし、本は200ページ前後を前提に書かれることがほとんどです。
「文章の上限が低い」つまり、「短くまとめないといけない」ことがミソです。
書こうと思えば長く書ける媒体の場合、場合によっては読者にとって知りたい欲求の低い情報が盛り込まれる可能性があり、短く書かないといけない媒体ほど、その可能性は低くなります。
新聞は見出しとリード、あるいは第一段落まで読めばその記事がおよそ何を伝えようとするものかわかるようになっています。
読者に知ってほしい情報のボリュームがいわゆる「逆三角形」(▽)になっているわけで、新聞を読めば自然と「結論から書く」「優先順位の高いことから書く」という商業文章に必要な型を学べます。
また、新聞は1行の文字数が12文字と他の媒体に比べて短いことも特徴です。
1行が短いと、上から下へ、下から上への目線の移動が多くなりますよね。
こういった性質がある媒体の場合、文章のリズムが悪かったり、一文が長いと読者が理解しづらくなってしまいますから、体言止めを要所に入れたり、読者の息継ぎの部分で読点を入れたり、一文を短くしたりして読みやすくする工夫がなされます。
これらの理由から、商業文章を書くことがうまくなりたい人には新聞を読むことを勧めます。
週刊誌を二番目に挙げた理由
新聞を読み、「優先順位を考えて簡潔に書く」文章の型を学んだら、次に週刊誌や雑誌を読んで、「ある程度長い文章の完読性を高める工夫」を学ぶといいのではないでしょうか。
- 新聞記事は情報が取捨選択され、無駄が省かれたもの
- 週刊誌や雑誌は読者を引きつけ、完読性を高めるために情報が並べられたもの
細部を除けばこんな類型化を図ることができるとわたしは考えていて、週刊誌や雑誌は新聞記事よりも長い分、「いかに読者を引きつけるか」「いかに最後まで読んでもらうか」が考えられた構成になっていると思うんですね。
わたしも週刊誌や雑誌に記事を書いたことがありますが、新聞記事を書いていたときよりも「情報をどう並べていくか」という構成の検討に苦労しました。
構成が難しかったのは文章量が多かっただけでなく、「人称」も関わります。
新聞もそうですが、週刊誌や雑誌の記事は地の文と会話文が分かれている3人称で成り立つことが多いため、取材先のメッセージだけで構成される1人称よりも考えるべきことが多いのですよね。
文章がうまくなりたいライターは「どんな媒体を読むか」だけではなく、「人称がどうか」も着目するといいのではないでしょうか。
わたしの場合、基本的には3人称の記事を書く方が難しく、時間もかかります。複数の記者やライターに聞いたことがありますが、彼ら彼女らも同意見でした。
小説で「引きつける文章」を知る
商業ライターとして読みやすくわかりやすい文章を書きたいのであれば、まずは新聞と週刊誌・雑誌を読むだけで十分だとわたしは思います。これらの媒体に文章の基本は凝縮されていると考えるからです。
その一方で、文章の可能性を知りたい、感じたい人であればぜひ小説を読むことを勧めます。
小説はわたしたちが物理的に生きていく上では必要のないものだと思いますが、小説ひいては文学があったからこそ「今まで生きてこられた」という人が少なくないのも実際のところではないでしょうか。
わたしも小説好きであることが今の仕事をしているきっかけになっています。
決して読む必要なんてない。でもどうしようもなく手に取ってしまうし、気が付けばその小説を読むのに膨大な時間を使い、没頭していた――。
商業文章は読者に有益な情報を届けることが主目的だと思いますが、小説はそうではないですよね。
即物的には役に立たないものです。
でも、そんなものを数百ページにわたって読ませてしまう。そのことにわたしは文章の可能性を感じます。
「どんな文章が人を引きつけるか」。文章を書くことを仕事にする人であれば、小説を読むことで文章の果てのなさを感じるのもいいのではないでしょうか。
実利的には、小説の場面描写は3人称のルポなどを書くときに役立ちます。
ウェブメディアとSNSの優先順位が低い理由
優秀な書き手や校正者はまだ紙媒体に
ウェブメディアを読む優先順位が低い理由は下の通りです。
- 新聞や雑誌に比べると、書き手の技術が低い
- 新聞や雑誌に比べると、校正者の技術が低い(校正機能がない)
- 玉石混交でいい文章を見つけるのに時間がかかる
- 記事が長すぎることがある
これらはあくまでも、「そうであることが多い」というわたしの印象です。
「出版不況」といわれる今でも、記者や編集者の給料は他の民間企業に比べると高い傾向にあり、またこれらの業界は閉鎖的なムラ社会を構成しがちであることも手伝って、優秀な記者や編集者はまだまだ新聞社や出版社に多い印象を受けます。
すると自然、新聞社や出版社が母体でない純粋なウェブメディアの人材の質は前者に比べて劣ることが多くなりますから、書き手や校正者(デスク)の技術が低かったり、また校正者がおらず校正機能がほとんどなかったりすることもあります。
もちろん、ウェブメディアの中にも優秀な書き手や校正者はいるだろうと思います。
しかしながら新聞や週刊誌、雑誌に比べるとその割合が低いため、読み手からすれば質の高い記事に出合える確率は低くなるのではないでしょうか。
SNSはジャンクな文章が多い
そして、SNSを読む優先順位が低い理由はこちら。
- 文章が短すぎる
- 故に構成がない
- 短絡的・感情的になりがち
- 文章を読む力がつかない
SNSはジャンクな文章が多い印象です。
ライターの仕事はある程度の情報量を合理的に取捨選択し、自分なりに咀嚼して論理展開していくことが求められますが、SNSは短絡的な考えが過剰な表現で投稿されることが少なくないとわたしは思います。
まとめ
新聞を毎日読んで、ときどき週刊誌や雑誌を読む。ある程度文章の基礎を学んだら幅を広げるために小説を読む
こんな流れがいいのではないでしょうか。
紙の新聞は大きくて場所を取り、ページを繰ったり保管したりするのに手間がかかりますが、今は電子版をタブレット端末で読めばこれらの短所がなくなります。
詳細は下の記事に書きました。
わたしもタブレットで新聞電子版を読むことを楽しんでいて、毎日10~20本ほど読んでいます。
一人の考えとして参考にしてみてください。フリーライターの庄部でした。
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