地方在住ライターはどうすれば生き延びる可能性を上げられるか
今回は、タウン誌の出版社と新聞社で7年間、地域を担当していた元記者のショウブ(@freemediwriter)が、こんなテーマで持論を書きます。
わたしは今東京に住んでいますが、もし何らかの理由で地方に住むことになり、地方でも取材ライターとして食っていきたいと思ったらどうするか、考えました。
「ああ、そんな考え方・やり方があるのか」「盲点だった」
地方移住を予定しているライター、地方に住んでいるライターにこう思ってもらえるような記事を目指します。
「地域一番ライター」を目指す
わたしであればまずは、「地域で一番のライターになる」といった理念を立てます。
地方は企業が集積する都市部よりパイが小さいので、サバイブしていくのは簡単ではないと思うんですね。
なので、半端な気持ちでライターを続けるようなことはしないかと。
テーマが大きいほど、逆算して自分のやるべきことも見えやすくなると思います。
専門に特化せず、複数のジャンルを横断的に取材する。そして、「地域のことはこの人に聞けばわかる」「この人を介せばいろんな人とつながれる」と思われるような存在を目指します。
地方は都市部よりも人と人とのつながりやクチコミで仕事を受注できる可能性が大きく、またそんな経路を作らないと厳しそうなので、先に挙げたライターとしての存在感を醸成できれば強いのではないかなと。
「都道府県名」+「ライター」でブログ開設
その上で、実践的には始めに自分の住む「都道府県名」と「ライター」をタイトルに盛り込んでブログとツイッター、インスタグラム、専用のフェイスブックページを開設します。
地方ライターを企業が欲するときは「都道府県名 ライター」の条件で検索するであろうためです。
わたしは独立した2016年に「医療ライター」を冠したブログを開設し、程なくして「医療ライター」検索で1ページ目に表示されるようになったため、2017年から営業の必要がなくなりました(あくまでも経済的な意味に限ります)。
詳細は下の記事に書きました。
ブログとSNSで地域情報を発信
ブログと各種SNSを開設したら、地域で生きる日々や仕事の実績、取材のこぼれ話などをテキストと写真で発信していきます。
- おいしかった飲食店
- お勧め観光スポット
- 地域の面白い風習
- 地域の政治、経済、医療ニュースのリンク
- 仕事の実績
- 取材させてもらった人とのツーショット写真
- 取材のこぼれ話など
「おお、このライターは本気で地域でやっていく気だな」「地域のいろんなところに足を運んでいるな」「よく勉強しているな」
読者にそんなふうに思ってもらえるような、地方ライターとしての信頼感が高まるような内容を目指します。
Googleアラートを使って地域情報を自動収集するなど、ネタを集める方法については下の記事に書きました。
https://ikiru-writer.com/how-to-look-for-news-items/
医療に特化した内容ですが、他分野でも応用できると思います。
行政やマスコミ、各種団体にあいさつ回り
地方ライターが仕事を取っていく上ではフットワークが最も重要だと推察します。
仮にブログで検索上位表示されたとしても、そもそもニーズが小さいので問い合わせ件数が多くはないと思われるためです。
自分の足で、自分の存在感で仕事を取ってくる、仕事を作る
地方だとそんなマインドが一層、必要になりそうだと思うんですね。
わたしがあいさつ回りに行こうとするところは下の通り。
- 役所の関係課
- 地方新聞社の出版部、タウン誌、編集プロダクション
- テレビのローカル局、ラジオの地方局
- 広告会社、制作会社
- 自分の専門性が関わる団体(医療であれば医師会など)
- 商店会
- 政治家(議員)
営業先は地方紙に載っている広告・名刺広告も参考にします。
地域のキーパーソンを押さえる
わたしの経験では、地域には役所しかり、商店会しかり必ずキーパーソンがいます。
地域のいろんなこと・いろんな人を知っている、熱量もすごい
地方でライターとしてやっていく上ではそんな人を早くつかまえて仲良くなることが重要だろうと思うんですね。
あいさつ回りをしながら嗅覚を利かすことが大切で、いい人と出会えればその人を起点に人の輪が広がっていきます。
営業は定期訪問、郵送、メルマガ送信も
こういったところへのあいさつ回りを終えたら、もらった名刺を参考に、定期的に訪問・郵送・メールで近況報告をしたり、営業をかけたりします。
ライターとしての活動を伝えるメールマガジンを作って方々に一斉送信するのも手でしょう。
必要に応じて、自分が日ごろ更新しているブログ記事やSNSのリンクも添付します。
重要なのはあいさつ回りで終わらせず、定期的にアプローチすることです。
ライターが必要になったとき、真っ先に自分を思い浮かべてもらうにはどうすればいいか
そのための行動を考えることが大切ではないでしょうか。
雑談・ネタ取りから営業へ
営業をかけるときはライターという属性が利きます。
地域の話題を聞いたり話したりしながら営業の話に移行できるから、つまり、相手の警戒心を和らげる営業トークを行いやすいためです。
わたしはタウン誌に勤めていたときは広告の営業も行っていて、多い日は1日に30件ほどの企業や店舗などを訪問していました。
かといってゴリゴリに営業をする気はなく、地域のネタを仕入れるつもりでふらっと訪れる感じでした。
そして最後にそっと「こんな話もあるんですが…」と提案する形を採ることが多かったですね。
都市部の企業にもアプローチ
- ブログとSNSで小まめに地域情報を出す
- 関係先へのネタ取りと営業を定期的に行う
こうした土台が固まり、習慣化していったら、都市部の企業にもアプローチします。
なぜかというと、「都市部に会社があるけど地域の人・事象も取材している」ケースが少なくないからです。
わたしが今仕事をしている企業のうち、4社はこんな会社です。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う在宅ワークの普及によって、遠隔でライターと面談する企業も増えているのではないでしょうか。
今後は地方ライターでも都市部の企業と契約し、自分の拠点やその周辺で取材するケースがさらに増えると思います。
移住者やクリエイティブ職とつながる
地域の重鎮たちと親交を築いた後は、移住者やクリエイティブ職の人たちとのつながりも作りたいですね。
“新しい風”がネタや仕事を運んでくることがあるためです。
こういった人たちがコミュニティーを築いていればそこにも顔を出したい。
クリエイティブチームに参加する・作る
そして、クリエイティブの人たちと知り合ったら「チームを組んで仕事を受注する仕組み」を作れないかも模索します。
地方は都市に比べてライター、デザイナー、カメラマン、編集者、システムエンジニアといった人材が少ないでしょうから、企業からすれば一人ずつ探すのは一苦労。
そこで、「あの人に頼んでおけばパンフレットやホームページを丸ごと作ってくれる」と認識される状況ができていれば強そうです。
まあ、こういった仕組みは編プロや製作会社が作っている可能性があるので最初はそことタッグを組み、地域の状況を俯瞰した上で他に「望ましいチームの構成やあり方」が見えれば新たに自分たちで作っていくのもありでしょう。
地方では写真撮影のスキルが必須
地方はクリエイティブ人材と企業の予算が少ない傾向にあるでしょうから、地方ライターは写真撮影の技術が必須だと思います。
わたしも一緒に仕事をしている企業のうち2社との仕事では写真も撮っています。
わたしは会社の先輩から学びましたが、「見るに堪えるくらい」の質であれば独学でも撮影スキルは十分に高められます。
写真の質を上げるポイントなどについては下に書きました。
Webライターは最後の手
そして近年のトレンド「Webライティング」。
わたしであればこれは最後の手にします。
- 読者に対する貢献度が低くなりやすい
- ライターとしての価値が半端になりやすい
今はクラウドソーシングサービスを活用してWebライティングの仕事を受注するのが当たり前の状況になりましたが、そもそも、Webライティングは記事を書くテーマに詳しい人を取材しないので、記事の質が低くなりやすい。
むしろ読者に悪影響を与えてしまう可能性もあります。
加えて、「Webライティングという手段もある」という状況が安心感を生み、取材ライターとしての行動量が減る、結果的に地方ライターとしてもWebライターとしても半端な存在になる恐れがあります。
わたしであれば、最初からWebライティングに手を出すことはしないかなと。
わたしのWebライティングに対する考えは下の記事にも書きました。
専門性も同時に育てる
移住前から専門性のあるライターはその武器を生かすことも大切でしょう。
そうではない人もさまざまな分野を取材するうちに「これだ!」と思うものがあればそれを伸ばす動きも取りたいところ。
都市部に比べてなかなか難しいところがあるかもしれませんが、うまくはまればライターとしてのやりがいは大きくなりますし、もしかしたら「地方ジャーナリスト」の道が開けてくるかもしれません。
というのも、地方では特定分野に秀でた記者・ライターが少ないためです。
全国紙の記者は一般的に2、3年で異動しますし、地方紙でも専門の部署がない分野があります。
例えばわたしが新聞記者として佐賀市を担当していたとき、県全域で見ても佐賀の医療に詳しい記者はいなかったと思います。
地域を楽しめる人でないと難しい
考えてみると、地方の取材ライターとして生き延びていくのはけっこう人を選びそうですね。
- 自分の住んでいる地域が好き
- 町を歩き回るのが好き
- さっと人に話しかけられる
- まめな情報発信が苦じゃない
- 生活と仕事が一体化しても苦じゃない
- 協調性もそこそこある
「地域で生きることを楽しめる」
これが最も大切そう。
わたしが2017年から全く営業せず、医療分野だけを取材し続けられている最大要因はおそらく、「面白い・楽しいから」。
シンプルに、楽しいと行動量が増え、行動量が増えると考えるための素材が増えます。考える素材が増えると工夫の余地が大きくなり、工夫すると結果が出やすくなります。
こんな好循環が生まれていくのではないでしょうか。
一方、気になるのは地方の気質。
地方は同調圧力が強そうなので、協調性が低いわたしはそこがネックになりそう。
会社員時代はずっと地域で取材と営業をしていたので、地方ネタはもっと書いていきたいですね。
地方ライターを取材してこのサイトで紹介することもやっていきたいです。
フリーライターの庄部でした。
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