「新聞記者になりたい」「でも倍率が高くて難しそう…」
そんなふうに、理想と現実に揺れている人もいるのではないでしょうか。
わたしもそうでした。なぜか、「新聞記者はすごい人がなるもの」と思っていました。
しかし、違いました。
「理想と現実」の「現実」とは、家族や友人、学校、メディアなどによって知らず知らずのうちに植えつけられた「幻想」かもしれません。
少なくともわたしは、「なるのが難しそう」な新聞記者になることができました(曲折があって2年で辞めましたが)。
この記事では、フリーライターのショウブ(@freemediwriter)が27歳だった2012年に中途で新聞記者になった具体的な方法を紹介します。
「難関」と言われていても、適切に努力を続けることで新聞記者になる可能性は高められます。
新聞記者になるのは難しい?
数字だけを切り取って見れば、「高倍率」とは言えます。
わたしが内定をもらった会社は西日本新聞社と中日新聞社の2社で、当時の倍率は西日本新聞社が約25倍、中日新聞社が約50倍でした。
これらの数字は目安です。
筆記試験を受けた会場の座席の数を目算して、どれくらいの割合で埋まっているかという印象値から大まかな受験者数を算出、その数字と内定者の人数を照らし合わせた結果なので、実際との誤差は少なくないかもしれません。
あくまでも「そのくらい」とイメージしてもらえればと思います。
西日本新聞社の記者職の内定者がたしか7人で、中途がわたしを含めて2人。中日新聞の東京枠の記者職内定者が10人ほどで、中途がわたし1人だけでした。
数字だけを見ると、「中途はさらに狭き門」と思うかもしれませんが、そもそも受験者が新卒よりも少ないので、「中途で絞ったときの倍率がさらに高くなる」とはこの情報だけでは判断できません。
それに、当時、新聞社は多くの場合に春と秋に採用試験を行っていて、わたしが内定を得たのは「新卒採用を重視する」と言われていた春採用試験でした。
たしか西日本新聞社はこの年、秋採用試験を行わなかったと思いますが、秋採用を行う新聞社であればもっと中途をとっていた可能性があります。
いずれにしても、倍率が低くないとは言えます。
専門的な対策で道は開ける
中途で新聞記者になることは簡単ではない。
そう、自分の経験からも思いますが、一方で、「適切で専門的な対策をすればおのずと道は開けてくる」「内定までの確率を上げられる」とわたしは思います。
なぜかというと、わたしも中途で試験を受けて一発で内定を得たわけではないからです。
転職活動1年目に受けた全ての新聞社の試験に落ちたものの諦めず、試行錯誤を続けた結果、2年目にして内定を得ました。転職活動期間は1年半でした。
それでは、わたしが対策として大切だと思うことを書いていきますね。
新聞ダイジェストを熟読
これは必須です。
新聞社の筆記試験は一般企業のそれよりもはるかに難しく、時事や教養が問われます。少なくとも過去1年間の「月刊新聞ダイジェスト」を熟読しておきましょう。
月刊新聞ダイジェストは、新聞ダイジェスト社が発行している月刊誌で、各紙に掲載された1カ月分の主要ニュースがコンパクトにまとめられています。
マスコミ試験用の問題集は複数出されていますが、わたしが最も有用だと思うのは新聞ダイジェスト。
問題集は「広い期間のニュースを1冊にまとめる」という性質上、どうしても取りこぼしが生まれるので、毎月新聞ダイジェストを購入して、小まめに時事問題をフォローしていく方が有効です。
毎日新聞を読むことは筆記試験対策の前提ですが、いくらニュースに日々触れていても忘れてしまうことは少なからずあります。
それを新聞ダイジェストで補い、記憶を定着させていくイメージ。
わたしは転職活動をしている時、常にバッグに新聞ダイジェストを入れておき、暇があれば読んでいました。
仕事を終えて帰宅した後も30分間は新聞ダイジェストを読む時間に充てていました。
バックナンバーはアマゾンで購入することができます(最新号も小さな書店には売っていないことが多いので、ネットで買う方がロスが少ないかもしれません)。
試験突破のカギは作文・論文の出来
筆記試験を通過するためにわたしが最も重要だと思うことです。
わたしが新聞社の採用試験を受けた2011年と2012年の当時、筆記試験は時事・教養問題と作文・論文の2本立てで構成されていました。
受験者の多くが新聞ダイジェストを読むなどして時事・教養問題の対策をしていると思われますが、作文・論文対策までしている人はそれよりも少ないでしょう。
なぜかというと、作文・論文の準備をする方が手間がかかるからです。
新聞ダイジェストを読むのは受け身な行為であって、考えなくてもとりあえず時事ネタを覚えることで試験の点数はある程度上げられます。つまり、楽なんですね。
その一方で、文章を書くのは自分の頭で考え、自分の内面を掘り下げていく行為ですから楽ではありません。
さらに、どんなお題が出るかわからない不確定要素の強いものなので、「自分が頑張った分の見返りを得られるのか」と疑問に思い、手を出しづらいのではないでしょうか。
でも、だからこそ、作文・論文対策は重要なのです。
ライバルが力を入れづらい分野は、逆を言えば頑張ることでライバルと差をつけられる分野だからです。
さらに、作文・論文の出来は筆記試験の中でもウェイトが高いと言われていますから、ここにどれだけの力を注ぐかが筆記試験または採用試験全体の通過率を大きく変えると思います。
予定稿を3本は用意しよう
作文・論文対策として、予定原稿を少なくとも3本は用意しておきましょう。
予定稿を用意して試験を受けたことのない人は、この有用性についてピンとこないかもしれません。
「どんなお題が出るかわからないのに、予定稿を準備したって意味ないのでは?」
と、こう思う人がいるかもしれませんね。
わたしも不思議だったんですが、少なくとも3本あれば意外と対応できるもの。
例えば、「しま」という抽象的なお題だったら、「島」「縞」「シマ(なわばり)」「志摩」「四万」などと想像を広げていき、準備した原稿のうちこれらの連想と合いやすいものを選んでリライトすればいい。
推敲とリライトを重ねた、「これぞ!」と思う原稿を3本用意して、お題を原稿に引き付けるんです。
これが、新聞社の筆記試験を突破するコツです。
そもそも、原稿を準備せずにその場で質の高いものを書くのは至難の業。優れたひらめきとセンスのある人であれば別かもしれませんが、わたしにはできませんでした。
失敗した転職活動1年目を振り返ってそう思います。
原稿は必ず用意しておきましょう。
作文は自分の成長を書こう
では、どんな原稿を用意しておくかというと、それは「自分を伝えるもの」です。
試験官が知りたいのは、あなたがどんな人間であるかということ。
人生においてどんな経験をし、どんな困難にぶつかったか。そのときに何を感じ、考え、どんな努力をして乗り越えたか。そして、人間的にどう成長したか。
「経験・体験・出会い」「困難」「成長」「価値観の揺らぎ」が作文を書く上でのポイントです。
試験官はベテランの記者やデスクです。今までに多くの文章を読んできている人たちですから、世間的によく言われることをトレースしたような原稿は求めていないでしょう。
あくまでも自分。泥臭くても自分。
自分で勝負することが大切です。
マスコミ塾で学ぶ
- 新聞ダイジェストの熟読
- 予定稿の準備
この2つだけで内定を得られる人はいるかもしれません。
これらを押さえて筆記試験を突破し、面接でも試験官との相性が良かったりすれば可能性はあります。
こうした対策をした上で、さらに内定の可能性を高めたいのであれば、マスコミ塾で学ぶことをわたしは勧めます。
なぜかというと、わたしの場合、マスコミ塾に入らずに自己流の対策を続けていたら内定をもらえなかっただろうと思うからです。
「マスコミ塾なんて何だか軽い」「ミーハーな人が行くもの」「胡散臭い」
そんなイメージを抱いている人がいるかもしれませんが、わたしが通っていた塾は先生の人柄が素晴らしく、その人は温和でありながら厳しさを秘めた、尊敬できる紳士でした。
この記事を書くことを先生には伝えていないので、塾名は伏せますが、2019年10月現在、「マスコミ塾」で検索するとすぐに目が留まる位置にホームページが表示されます。
内定者の声などの情報量が非常に多いのが特徴です。
マスコミ塾のメリット
あくまでもわたしが通ったマスコミ塾に限定されますが、メリットを伝えますね。
モチベーションが上がる
先生が新聞記者をしていたころの話を聞いたり、塾生が新聞記者になりたい理由を聞いたりすることによって、転職活動へのモチベーションが高まりました。
「こんなに熱い思いを抱いている人がいるんだな」「こんなに努力している人がいるんだ」「よし、オレも頑張ろう!」
そう思えました。
一人で臨む転職活動は孤独です。
特に試験に落ち続けていると、「何をやってもダメなんじゃないか…」「どうせ受からないだろう」といったネガティブな気持ちが膨れ上がっていく恐れがあります。
すると、試験に向けた行動量が減り、内定を得る可能性も減ってしまいます。
そんなときに、同じ目標に向かって頑張っている仲間がいれば自分を奮い立たせられます。
行動量が増える
マスコミ塾に通うことで、試験対策の行動量は圧倒的に増えました。
マスコミ塾で行っていたことの一部は下の通りです。
- 新聞記事の感想を塾生間で話し合う
- 漢字の読み書き問題を解く
- 模擬作文試験を受ける、先生に添削してもらう
- 模擬面接を受ける、自分の印象を先生や塾生から聞く
- 模擬取材を行う
気になった新聞記事の感想を話すためには当然、事前に記事を読み込んでおく必要がありますし、模擬作文試験に当たっては予定稿を用意しておかなければなりません。
努力せざるを得ないわけです。
これはわたしの場合ですが、塾生や先生の目も気になり、「舐められてたまるか」といった見栄や意地をバネに努力した側面もあります。
強制的に努力しないといけない環境に置くことは、甘えがちなわたしにとっては重要でした。
ライバルを知ることができる
これも大きなメリットでした。
わたしの周りには新聞記者をめざしている人がいませんでした。
「どんな人が新聞記者をめざしているんだろう」
そんな疑問が膨れ上がり、転職活動1年目は試験会場にいる受験者の多くがなんだかすごい人たちに見えたものです。
マスコミ塾に入ってわかりました。
全然そんなことはないと。
みんな不安を抱えたり、悩んだり、ちょっと課題をさぼったりする普通の人なんですよね。
フリーランスとして経営者と打ち合わせたり、医師を取材したりする中でも思いますが、人を過大視しないことはとても大切です。
「みんな、たかが人間、普通の人間」
こういった感覚が根にあれば、リラックスして人と話したり、自分のペースで物事に取り組んだりできるのではないでしょうか。
新聞記者をめざして継続的に努力を続ける上でも、「あの人が受かるならオレも受かるはず」という自己肯定感が生きてくるように思います。
結論:諦めなければどこかに潜り込める
- マスコミ塾に入って強制的に努力する環境をつくる
- ライバル(仲間)を知り、自分を発奮させる。
- 専門的な指導を受ける
- 塾外でも新聞ダイジェストを読み、作文の予定原稿を書き続ける。
こうすれば新聞記者になる可能性は高められます。
とはいえ、いつ新聞記者になれるかは人によります。
わたしは塾に入って半年ほどで2社から内定をもらいましたが、1年、2年と通い続けている人もいました。
「あなただから受かったんじゃないか」
こう思う人がいるかもしれませんが、個人的な印象では、諦めなかった人は第一志望の会社ではなくても、記者や編集者になれています。
ある人は30歳前後でした。新聞社の受験条件ギリギリの年齢でありながらアルバイトを続け、夜行バスで上京し、東京でマスコミ塾の講座を受けていました。
その人は、ある大手紙に入社しました。
またある人は、新卒でマスコミ業界に入れなかったものの諦めず、牛丼チェーン店の店長として働きながら転職活動を続け、専門誌の編集者になりました。
ハンバーガーチェーン店の店長を務めながら20代を過ごし、大学を卒業しておよそ10年後に「念願の」編集者になることができた人もいます。
また別の人は新聞記者になりたかったものの、新卒では夢破れ、中途で新聞社に入れたものの配属されたのは営業部。
それでも記者の夢を諦めず、30歳手前にして他社に移り、晴れて記者になりました。
10年かそれ以上かけて情熱を燃やし続ける人もいるんですよね。
すさまじくないですか?
新聞社の採用試験は難関と言われますが、まず筆記試験は暗記とブラッシュアップされた予定稿の準備によって通過できます。
次に面接。
これは少数の人間が判断することなので、残念ながら相性という時の運はあります。
わたしも転職活動1年目のときに毎日新聞の最終面接まで進みましたが、2年目は一次面接でさくっと落ちました。
でも、たかが人間が決めている試験とも言えるわけで、努力を続けてきた人の話すことは聞き手の心を打つと思うんですね。
新卒でダメだったから諦める、中途で1度受けてダメだったから諦める。
こういった人がほとんどでしょうから、数年にわたって努力を続けた人の存在感は相対的に目立ちます。
諦めずに適切に努力を続ければ新聞記者にはなれる。
わたしはそう思います。
学歴は関係あるのか? 現場からの答え
最後に、気になるであろう学歴のことも伝えますね。
「新聞記者になれる人はどうせ高学歴なんでしょ」
そう思う人がいるかもしれませんが、これは事実です。
わたしが知る限りでは、国公立の上位校、私立の早慶が多く、上智やMARCHが続きます。
知名度的にこれら以下の大学が出身の人は少ないです。
でも、いないかというとそうではありません。
偏差値・知名度ともに低い大学出身の人もマスコミ系の企業に潜り込み、そこで経験を積んで転職し、大手企業で記者をしている人はいます。
そもそも、こういった大学出身の人は自分にバイアスをかけて新聞社の採用試験を受けないケースも多いと思うので、「低学歴の人は受からない」というのは安易でしょう。
それに、筆記試験は努力で通過レベルに達するものなので、エントリーシートではねることが多い一般企業よりフェアであるとも言えます。
問題は面接試験で、高学歴な人が面接官には多いだろうと予想されるので、自分の出身校またはそれと同等の偏差値レベルの大学の受験者を優遇する可能性はあります。
しかしながらもそれも、筆記と作文で高学歴受験者よりもいい点をとったり、面接で自分の努力を伝えたりしてカバーできるのではないでしょうか。
新聞記者の中には実際に「低学歴」と判断される人もいるので、そう思います。
フリーライターの庄部でした。
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