ライター×知識

「効く」「利く」「表れる」「現れる」漢字の使い分け方【第2弾】

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この言葉は漢字か平仮名か。漢字だとすればどれを使えばいいのか

使い分けがわかりづらい言葉をライター・ショウブ(@freemediwriter)が解説するシリーズの第2弾。

前回は「平仮名か漢字か」を主眼にして下の言葉の使い分け方を紹介しました。

【記者が解説】「ころ」「つくる」は漢字? 平仮名? 使い分け方この言葉は漢字がいいのか、平仮名がいいのか。漢字だとすればどれがいいのか。特に間違いやすい言葉をピックアップ。...
  • とき
  • ころ
  • あと
  • つくる
  • もと
  • とも
  • いかす
  • できる
  • とまる
  • など

今回は、「どの漢字を使えばいいか」がわかりづらい言葉を中心に7つピックアップしました。

  • 「効く」「利く」
  • 「表れる」「現れる」
  • 「付ける」「着ける」
  • 「始め」「初め」
  • 「固い」「堅い」「硬い」
  • 「取る」「捕る」「採る」「執る」
  • 「変える」「代える」「替える」「換える」

情報の拠り所にしたのはこちら。

共同通信社が「わかりやすくやさしい文章が書けるように」と編集した『記者ハンドブック』。メディア関係者には定番の辞書ですね。

ライターだけではなく、総じて文章を書く仕事をしている人に参考にしてもらいたいものです。

記者ハンドブックとは? 愛用歴13年のライターが使い方解説【写真】ライター必携の校正ツール『記者ハンドブック』の特徴と活用方法について愛用歴13年のライターが写真付きで解説。...

使い方についてはこちらの記事で解説しました。

わたしも記事を書きながら復習しようと思います。

「効く」か「利く」か

「何らかの効果がある」という意味のときは「効く」だと想像しやすいですが、では「利く」はいつ使うのでしょうか。

答えは、「機能する」「役に立つ」「利用」を意味するときです。「効く」「利く」それぞれの用例を紹介しますね。

効く…薬が効く、効き目がある、宣伝が効いた、風刺が効いている、など

利く…応用が利く、機転が利く、小回りが利く、融通が利く、利き腕、など

使い分けに迷う場合は平仮名書きでよいとのこと。

「表れる」か「現れる」か

「怪物が現れる」と表記することから、「何かが出現する」意味のときに「現れる」を使うことは想像しやすいのではないでしょうか。

一方で、厳密にその使い分けを知らない人も多いと思います。

「表れる」は、「表示」「表明」「感情などを表に出す」場合に使われ、「現れる」は、「出現」「現象」「隠れていた姿や形が見える」場合に使われます

隠れていたものが見えるようになるのが「現れる」

これを軸に覚えておくと判断しやすそうですね。

表れる…効果・成果が表れる、結果に表れる、数字に表れる、喜びが表れる、など

現れる…正体・本性が現れる、太陽が現れる、湿疹が現れる、才能が現れる、など

「付ける」か「着ける」か

これも悩む言葉です。「そもそも平仮名の方がいいのかな?」と今でも考えます。

整理しましょう。

「付ける」は「くっつく」や「加わる」という意味を表す場合に、「着ける」は「身にまとう」「帯びる」「届く」を示す場合に使われます。

一方、「付ける」は「気を付ける」や「片を付ける」など、「くっつく」「加わる」とは捉えづらい場合にも用いられることから、「着ける」を軸に、「『着ける』でないときは『付ける』」といったように消去法で考えるといいかもしれません。

用例は下の通り。

付ける…色を付ける、気を付ける、条件を付ける、めどを付ける、値段を付ける、など

着ける…バッジを着ける、船を港に着けるなど

留意したいのは「身につける」。知識や技術を習得する場合には「身に付ける」、服などを着るときには「身に着ける」です。

「つける」を平仮名で表現するとき

さらに、「つける」を平仮名で表現する場合もあるので注意しましょう。

  • 「点ける」を意味するとき…電気をつける
  • 「即位」を意味するとき…先代は次男を王位につけた
  • 慣用的に平仮名が使われるとき…けじめをつける、差をつける、言い掛かりをつける、など

「始め」か「初め」か

「始め」を使うか「初め」にするかもわかりづらいのですが、

動きや物事を表す場合は「始め」

時間が関わるときは「初め」

ざっくりこう覚えておくと判断がしやすそうです。

始め…仕事始め、稽古始め、人類の始め、国の始め、など

初め…今年の初め、秋の初め、月初め、初めの日、初めからやり直す、など

ただ、「主たるものをはじめ」を意味するときは「首相をはじめ」のように平仮名書きなので注意。

「固い」「堅い」「硬い」

ここからは候補が3つ以上に増えます。

まずは「かたい」。

これは難しいですね。今でも場合によっては記者ハンドブックで調べます。

それぞれの概念と用例は下の通り。

固い「結び付きが強い」「融通が利かない」「揺るがない」意味のとき。「緩い」の対語。

用例:固い絆、頭が固い、意志が固い、固い友情、地盤が固い、財布のひもが固い、など

堅い「中身が詰まっていて強い」「確実」「堅実」の意味のとき。「もろい」の対語。

用例:堅い木の実、堅い木材、優勝は堅い、堅い守り、考え方が堅い、お堅い役所、など

硬い「外力に強い」「こわばった様子」の意味のとき。「軟らかい」の対語。

用例:硬い石、硬い皮膚、手触りが硬い、硬い表現、硬い文章、表情が硬い、など

「中身が詰まっていて強い」ときは「堅い」、「外力に強い」ときは「硬い」というのは面白いですね。今回のライティングで改めて理解し直しました。

とはいえ、これらの概念を覚えるのはちょっと難しいので、用例をその都度調べるのが現実的かもしれません。

「取る」「捕る」「採る」「執る」

「とる」も使う機会と漢字の候補が多い言葉ですが、これはさほど難しくないと思います。

「捕る」「採る」「執る」に当てはまらないときは一般的に「取る」

こう覚えておくといいでしょう。

用例は下の通り。

捕るつかまえる)…魚を捕る、ネズミを捕る、飛球を捕る、など

採る採取・採用)…貝を採る、キノコを採る、決を採る、その説を採る、など

執る役目として事に当たる)…式を執り行う、指揮を執る、事務を執る、など

取る一般用語)…資格を取る、責任を取る、年を取る、機嫌を取る、手続きを取る、メモを取る、汚れを取る、食事を取る、栄養を取る、命を取る、など

「変える」「代える」「替える」「換える」

わたしを含めて多くの人が「変える」が一般的だと考えているのではないでしょうか。だからこそ、注意が必要な言葉です。

「代える」「替える」「換える」を使う場合を頭に入れておくと、書き間違える可能性が減るでしょう。

代える…「ある役割を別のものにさせる」意味のとき。

用例:あいさつに代えて、命に代えて、親代わり、政権が代わる、投手を代える、など

替える…「新しく別のもの・行為にする」意味のとき。

用例:買い替える、入れ替える、衣替え、差し替える、建て替える、両替、など

換える…「AとBを交換する」意味のとき

用例:言い換える、書き換える、乗り換える、配置が換わる、引換券、など

変える…「前と異なる状態になる」「普通と異なる」意味のとき

用例:位置が変わる、生まれ変わる、形を変える、立場を変える、季節が変わる、など

ざっくり覚えやすくすると、

  • 「状態変化」→「変える」
  • 「交換」→「換える」
  • 「新しくする」→「替える」
  • 「役割の交代」→「代える」

こんな感じでしょうか。

最後に

記者・ライター歴13年のわたしが思う「漢字の使い分けがわかりづらい言葉」を挙げました。

注意してほしいのは、これはあくまでも記者ハンドブックのルールに沿ったものであり、絶対的な正解ではないことですね。

とはいえ、文章を書く人にとっては一つの大きな指標にはなるでしょう。

記者ハンドブックにはこの記事よりも多くの用例が載っているので、1冊持っておくことを勧めます。

平仮名と漢字の使い分けや漢字の使い分けだけではなく、

  • 間違えやすい表現
  • 送り仮名の付け方
  • 数字・単位・動植物の表記方法
  • 差別語・不快用語

など、言葉に関するさまざまな情報が載っていて、単純に読み物として楽しめます。

続編はこちら

【解説】平仮名と漢字のどっちがいいの? 表記に迷う言葉【第3弾】「良い」「よい」、「一つ」「ひとつ」、「事」「こと」、「来る」「くる」、「過ぎ」「すぎ」など表記に迷いやすい言葉をライターが紹介し、その書き方を解説します。...

第3弾では、下の言葉の漢字と平仮名の使い分けについて紹介しています。

  • 「良い」か「よい」か
  • 「一つ」か「ひとつ」か
  • 「1人」か「一人」か「独り」か
  • 「事」か「こと」か
  • 「来る」か「くる」か
  • 「過ぎ」か「すぎ」か

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