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ライターにとって最も身近な罪?どんな記事や表現が名誉毀損になるか

ライターの名誉棄損罪
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ライターにとって「身近な犯罪」になるかもしれない「名誉毀損罪」。どんな記事やどんな表現が該当するのか、あらましを知っておきたい

今回は、こんな問題意識や関心を持っている人に向けて、フリーライターのショウブ(@freemediwriter)が関連サイトを調べて大枠をつかみたいと思います。

詳しく知るには弁護士を取材する必要がありますが、インターネットでも弁護士の解説などを参考にし、浅くとも知識を持てば興味が育っていくかもしれません。

あたりをつけられるようになれば現実的にリスクヘッジを図れるだけではなく、文章を書く意味を考える機会も持てるのではないでしょうか。

法律用語は硬くてとっつきにくいので、まずは辞書に書かれていることから調べてみましょう。

辞書に掲載の「名誉毀損罪」

  • 不特定多数が知り得る状態で、具体的な事柄を挙げ、人の名誉を傷つける罪
  • 「名誉」は「社会的評価」
  • 刑は3年以下の懲役または禁錮、もしくは50万円以下の罰金

「デジタル大辞泉」「ブリタニカ国際大百科事典」「百科事典マイペディア」の内容をまとめ、要約しました。

これらを基礎として、ポイントを探っていきます。

挙げた事柄の真偽にかかわらず成立する

「嘘やでたらめで名誉を傷つけられた!」ケースだけでなく、言ったり書いたりした内容が本当のことであっても、相手の名誉を傷つければ罪が成立するそうです。

一方、こんな注意点もあります。

  • (表現の自由を保障する意味で)その行為が公共の利害に関連し、もっぱら公益のためなされた場合
  • 相手が「死者」「公務員」「選挙などの候補者」である場合

挙げた事柄が真実であれば成立しない

ここまでをまとめると、

  • 挙げた事柄が嘘でも本当でも、相手の名誉を傷つければ罪は成立する
  • 挙げた事柄の公共性・公益性が高い場合は罪にならない

この2点はポイントになりそうですね。

成立要件の「公然」とは

少し細かく見ていきましょう。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する

――刑法第230条

刑法にはこう記されています。つまり、罪が成立する要件は

  1. 公然と
  2. 事実を適示し
  3. 人の名誉を毀損した

この3つが合わさっていることが条件になると弁護士のウェブサイト(最下部に添付)にも書かれていました。

「公然」とは上に書いた通り、「不特定多数(不特定または多数の人)が知り得る状態」を指します。

では、これは具体的にどんなこと・状態を意味するのでしょうか。

  • 「多くの人」に定義はないが、「数十人程度」で該当
  • インターネットでの情報発信は該当
  • 特定少数に伝えたとしても、それらの人が不特定多数に伝える可能性があれば「公然」とみなされる場合がある

ネットに載っている弁護士の解説をまとめました。

1番目と2番目は理解しやすいでしょう。ポイントは3番目で、わたしは初めて知りました。

弁護士の解説に挙げられていた下の具体例を読むとイメージしやすいです。

密室でその人だけに名誉を毀損するような発言をした

外に声が漏れない場合、不特定多数には知られないため、「公然」を満たさない

新聞記者にデマを流した

→伝えたのは特定の一人であり、「不特定多数」ではないが、新聞記者が記事にすること、つまり不特定多数に伝えることは想定されるため、「公然」を満たす

成立要件の「事実を適示」とは

次に、成立要件2番目の「事実を適示」を調べます。

  • 法律でいう「事実」は単に「具体的な事柄」を指す
  • 感想や評価は「具体的な事柄」ではない

弁護士の解説をまとめました。

一般的に「事実」は「本当にあったこと」を意味しますが、法律用語の「事実」はそうではないそうなんですね。

本当か嘘かは関係がなく、単に具体的な事柄を意味する」とのこと。これは重要で、先に書いた辞書の内容と一致します。

次に大事なのが、感想や評価は「事実」ではないこと。

つまり、

  • あの会社のあの商品は質が悪い
  • あの店の料理はまずい
  • あの人は気持ち悪い

こういった感想や評価は「具体的な事柄」ではないので、要件を満たさないそう。

ただし、名誉毀損罪が成立しなくても、侮辱罪に問われる可能性があるといいます。

成立要件の「名誉を毀損」とは

そして、成立要件の3番目。そもそも「名誉を毀損」とは何を意味するかですが、これはその人の「社会的な評価を低下させる」ことを指すといいます。

単なる名誉感情の保護を目的とするものではない」(ブリタニカ国際大百科事典)とのことです。

「名誉毀損で訴える!」はつまり損害賠償請求

ここまで、刑法にもとづく犯罪としての「名誉毀損罪」について説明してきましたが、実際のところ、この罪で逮捕・起訴されて刑事事件に発展することは少ないそうです。

実際に名誉毀損が行われても刑事事件にまで発展せず、民事事件として争われることが多いと考えられます。

原告(被害者)も、「相手を罰したい」という感情よりも「名誉毀損による損失を弁償してほしい」ということが強いからです

――刑事事件弁護士ナビ

弁護士のサイトには起訴率について「20%程度」「3割弱」と書かれているものがありました。

ですから、「名誉毀損で訴える」とはどちらかといえば、民法にもとづく損害賠償請求を指すといいます。

民法と刑法の違い

民法…個人間の関係を規律する法律

刑法…犯罪と刑罰を定めた法律

民法での名誉毀損

  • 公然性が条件とならないため、適用が少し広くなる
  • 刑法と同じで、挙げた事柄の公共性・公益性が高く、真実であれば成立しない

「民法上の名誉毀損」と「刑法上の名誉毀損罪」の違いはこうであるそう。

記者やライターが名誉毀損で訴えられるリスク

  • 仕事内容は公然性を満たす
  • 書いた内容が感想や評価ではなく、具体的な事柄であり、その内容の公共性・公益性が低い場合、嘘でも本当でも記事に出てくる人物の名誉を傷つければ罪に問われる可能性はある

記者やライター、ブロガーが文章を書いて世に出す場合、不特定多数の人に読まれる状態をつくるので、まずは成立要件の「公然性」は満たしますよね。

そのうえで、書いた内容が感想や評価ではなく、具体的な事柄であり、その内容の公共性・公益性が低い場合、記事に挙げた人物の社会的評価を落とすものであれば罪に問われる可能性があると言えそうです。

それと、たとえ名誉毀損罪が成立しなくても、表現によっては侮辱罪が成り立つ可能性があるため、この罪の条件も知っておくとよさそう。

疑問に思うこと

  • 「公共性」「公益性」とはどんなことか
  • 「社会的評価を落とす」とはどんなことか
  • ライターが罰せられた例は?
  • 民事での賠償額はどれくらいか

これらのことが気になります。

今回は基本的な知識を得るまでにしておいて、徐々に判例を読んで上のことについて勘所をつけていきたいですね。

フリーライターの庄部でした。

記事内の情報、考え、感情は書いた時点のものです。

記事の更新情報はツイッター(@freemediwriter)でお知らせします。

参考

名誉毀損罪とは(コトバンク)

名誉毀損とは(コトバンク)

「名誉毀損」とは?(しらかば法律事務所)

名誉毀損とは? ネット上の誹謗中傷を訴えるのに必要な3要件を解説(モノリス法律事務所)

名誉毀損とは|名誉毀損で逮捕された場合の対策等を弁護士が解説(中村国際刑事法律事務所)

名誉毀損で逮捕されるケース|刑事と民事の名誉毀損の違いと対処法(刑事事件弁護士ナビ)

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