フリーランスにはさまざまな初体験が待ち構えていますが、すぐにぶつかる現実的なそれが、クライアントへの報酬の請求。
請求書を作ってデータまたは紙で企業に送り、それが経理の担当者に届くことで初めて私たちフリーランスは報酬を受け取る準備が整います。
フリーライターの場合、請求金額の計算式は
「原稿料+消費税-源泉徴収税=支払額(受取額)」
ですが、独立の準備をしている人やフリーランスになったばかりの人の多くが「源泉徴収って何だろう」と疑問を持つのではないでしょうか。
「源泉徴収」。それは、フリーランスであるならば必ず知っておかないといけない言葉です。
今回の記事では、フリーライターのショウブ(@freemediwriter)が源泉徴収の意味とその対象になる報酬の種類について解説します。
源泉徴収とは
「企業が社員やフリーランスの所得税を税務署に前払いする制度」
源泉徴収を簡単にいうとこうです。
もう少し詳しく書くと、源泉徴収とは、給与や報酬の支払い者(会社員であれば所属する会社、フリーランスであればクライアント)が、所得税と想定される金額を給与または報酬から差し引き、その分を国(税務署)に納める制度のことをいいます。
所得税は前の年の1年間の所得(収入から経費を引いた儲けの金額)に対してかけられ、所得の金額によって税率も変わるので、最終的にはその年が終わるまで所得税額は確定しません。
しかしながらそれだと国が税金を回収するのが遅くなってしまうため、「少額でもいいから先に少しずつもらおう」という仕組みです。
企業がその役割を担っているのは、その方が効率がいいためです。
国民一人ひとりが毎月税務署に申告すれば税務署の作業が膨大になりますし、そもそも国民一人ひとりが税金に関するリテラシーを持つのは容易ではありません。
企業がまとめて社員や外注先フリーランスの想定される所得税を前払いすることで、こうしたコストを減らしているのです。
なお、企業が法人と仕事をする場合、馬主に支払う競馬の賞金を除き、源泉徴収は課せられません。
源泉徴収はあくまでも、フリーランス(個人事業主)に対して行われるものなのですね。
所得税のズレは「年末調整」か「確定申告」で修正
源泉徴収はあくまでも想定される所得税を納めているに過ぎないので、結果的に誤差が生じてしまいます。お金が足りなかったり、お金を納め過ぎたりするのです。
そんな場合、会社員であれば企業がその誤差を年末に調整します。
おそらく多くの会社員がその意味は知らなくても、「年末調整」の言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。社員からお金をもらい過ぎていればその分を返して、足りなければ給料から天引きするわけです。
しかしながら、フリーランスは自ら誤差の調整を行わなくてはなりません。その機能を果たすのが、「確定申告」です。
確定申告とは、1年間の所得と所得税の金額を税務署に申告すること。確定申告を行って所得税を納めていない人は納め、また源泉徴収によって所得税を納め過ぎている人は後日、税務署からその分が還付されます。
源泉徴収の対象になるフリーランスの報酬
フリーランスがもらう報酬が全て源泉徴収をされるかというと、そうではありません。まずは、源泉徴収の対象になる報酬を見ていきましょう。
国税庁のホームページなどによると、下の通りです。
源泉徴収の対象になる報酬の種類
- 原稿料
- デザイン料
- 講演料
- コンサルティング料・指導料
- 弁護士や公認会計士、司法書士に支払う報酬
- プロスポーツ選手、芸能人、モデルに支払う報酬
- ホステスやコンパニオンに支払う報酬
- 映画や演劇、テレビなどの出演料
- 芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
- 外交員に支払う報酬
フリーランスに多いデザイナーやライター、コンサルタントの報酬は源泉徴収されるわけですね。
SEへの報酬は源泉徴収の対象になるか
同じく、フリーランスに多い「SE(システムエンジニア)」はどうなのでしょう。
国税庁のホームページには該当する情報が載っていませんが、源泉徴収に関する記事を10本ほど読んだところ、プログラミングやコーディングは対象にならないそう。
その一方で、業務内容にテキストライティングやウェブデザインが入ってくれば「原稿料」や「デザイン料」として対象になるといいます。
「SE」と一口に言ってもその仕事は多岐にわたりますから、この点は注意したいところですね。
請求方法としては、報酬の内訳を明記していれば対象になる項目だけが源泉徴収され、「ホームページ制作代」など一括したものであれば総額に対して源泉徴収されるといいます。
ちなみに、源泉徴収の税率は報酬額によって異なっていて、100万円以下の場合は10.21%です。
100万円を超える場合は国税庁のこちらのページをご参考ください。
厳密にいうと、10.21%のうち、純粋な所得税分は10%で、残りの0.21%は東日本大震災の復興財源に充てる復興特別所得税分になります。
まとめ
フリーライターの原稿料は源泉徴収の対象になるので、請求書には必ず源泉徴収の金額を記載し、原稿料と消費税を合わせた金額から引いたものを支払額(受取額)にしましょう。
そして、確定申告も必ず行いましょう。
経費がかかっている分、フリーライターは事前に所得税を納め過ぎているので、確定申告を行うことで超過分が戻ってきます。
「そもそも、原稿料になぜ消費税がかかるのか?」
こんな疑問を持った方は下の記事にその理由を書いているので参考にしてみてください。
フリーライターの庄部でした。
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