同じ企業でもライターによって原稿料は違う可能性がある
フリーライターを志望する人に知ってほしいお金の実際のところ。
医療ライターのショウブ(@freemediwriter)がもらってきた原稿料について詳報した第一弾、取材ライターに知ってほしい文字単価の捉え方を書いた第二弾に続き、冒頭のテーマで第三弾を書きます。
過去記事はこちら。
https://ikiru-writer.com/writer-manuscript-fee/
結論を先に言うと、先述の通り同じ企業でもライターによって原稿料が違うことがあるので、他のライターの報酬は知らない方が精神的にいいとわたしは考えています。
知ってもいいことはないと思うんですね。
なぜライターによって原稿料が違うことがあるのか、そして「知らない方がいい」とわたしが言う理由は何か。
フリーライターが企業と良好に関係を保ち続けるために参考になる知識・考え方ではないかと思います。ご参考ください。
原稿料は「需要と供給の質」で変わる
2020年春に本格化した新型コロナウイルス感染症の影響によって、マスクの値段が爆上がりしましたよね。
わたしもなかなか手に入らず、通販で3000円の高額商品を買わざるを得ませんでした。
これは、マスクの必要性(需要)に対して供給が追い付かなかったために起こったことでしょう。
ライターの原稿料もこういった市場原理と同じように、「需要と供給の質によって変わり得る」と考えてもらって構わないかと思います。
ライターと企業でいう「需要と供給の質」は下の要素などで変わり得ます。
- 景気
- 企業の事業内容
- 企業の業績と予算
- 企業の体制
- 企業が求めるライター像
- 契約するライターの数
- 契約するライターの仕事の質
企業が景気の影響を受けて予算を減らせば、ライターがそのあおりを食う可能性がありますし、編集プロダクションへの外注化など企業の体制の変化によっては報酬が減るだけではなく、仕事が全く来なくなることだってあります。
企業との仕事が絶えたわたしの事例は上の記事に書いたので参考にしてみてください。
一方、企業が求めるライターがなかなかつかまらない、例えばライターに何らかの専門性を求めるものの、その専門性を持つライターが少なければ自然と報酬は上がりやすくなるでしょう。
もちろん、数年にわたってライターへの原稿料を一律に据え、契約するライターの数や仕事の質によっても報酬を変えない企業はあると思いますが、中には上に挙げた要素の変動から、状況によって企業がライターへの原稿料を変える可能性は十分に考えられるわけです。
ですから、ある企業で複数のライターが仕事をしていたとすれば、ライター個々で原稿料が違う可能性があります。
これはごく自然なことで、あるライターが他の多くのライターよりも仕事の質が格段にいい場合、そのライターの原稿料を上げるのは企業の誠実さを表しているとわたしは思います。
ライター庄部が原稿料を上げてもらったケース
実際にわたしも、過去に3つの企業から仕事の質を考慮され、原稿料を上げてもらったことがあります。
全て企業から報告された形で、わたしから相談を持ち掛けたわけではありません。
上がり幅はいずれも数千円でしたが、それでも当初と同じ金額で仕事をしているライターとは原稿料が違ってきますよね。
さらに、わたしの場合は2016年からブログ経由で仕事を受注していますから、もし一緒に仕事をした企業が別にネットなどでライターを公募していた場合、それに応募する形よりも原稿料が高く設定されている可能性は考えられます。
まあ、これは単純に時期が関係していて、わたしに連絡を取ったときは企業からすれば「自ら積極的にライターを集めないといけない時期」で、それがひと段落して公募を始めたときは「ライターの必要性が相対的に下がっていた」「だから原稿料を下げた」なんてこともあるかもしれません。
あくまでも可能性の話ですが、想像はしやすいのではないでしょうか。
こんなふうに、「企業との仕事の始め方」も、他のライターとの原稿料の違いが生まれる要素の一つだと思います。
それと、企業との取り引きの形、つまり直接取り引きか間接取り引きかでも原稿料は変わります。
クラウドソーシングサービスや、出版社・メディアの下請けになっている編集プロダクションからの受注がその典型ですが、当然、第三者によって仕事を仲介されていると手数料が差し引かれますよね。
他ライターの原稿料を知ってもいいことはない
- 企業との仕事の始め方
- 企業との取り引きの形
- 企業の状況
- ライターの仕事の質
簡単にまとめると、上の要素によって同じ企業であってもライターごとに原稿料は違う可能性があるわけです。
そこで、他のライターがいくらもっているのか気になる人もいるかもしれませんが、わたしはあまり考えないことを勧めます。
なぜかというと、他のライターの原稿料を知っても何も得はしませんし、場合によっては企業との関係が悪くなる可能性があるからです。
シミュレーションしてみましょう。
複数のライターが仕事をしている企業があって、あなたはそのライターの一人です。
一般的に企業は他のライターの原稿料を明かさないので、あなたが他のライターの原稿料を知るとすれば、それは「何らかの形で他のライターやカメラマン、デザイナーなどその企業と仕事をしているクリエイティブ職から聞く」という流れになります。
ここで重要なのは、それらのクリエイティブ職との関係性です。
すごく仲の良い友人がクリエイティブ職であり、同じ企業と仕事をしている。
こんなことは起こりづらいので、情報源となった人とはそう深い関係ではないわけですよね。
- なぜ他のライターはその金額なのか
- 最初からその金額だったのか
- 途中で上げてもらったのか
- 上げてもらったのであればその理由は
もし他のライターの原稿料が自分よりも高い場合、こんな疑問が生まれると思いますが、あなたは関係の深くない人に続けて質問するでしょうか。
おそらく多くの人が突っ込んでは聞かないでしょうし、仮に聞いたとしてもその理由については「よくわからない」という答えに留まるのが関の山だと思います。
「企業に内情を聞いてみる」という選択肢もありますが、自分と情報源になった人との関係性、情報源になった人と企業との関係性、自分と企業の今後の関係性―を考慮すると、行動に移さない人の方が多いでしょう。
となると、結局のところ、自分の疑問は解消されないわけです。
他のライターの方が原稿料が高いと知った場合、負の感情が生まれて企業への不信感が高まり、その感情が企業への対応に何らかの形で現れてしまう。
他のライターの方が原稿料が低いと知った場合、「自分の評価が高い」と確かめられるのはポジティブな手応えを残すかもしれませんが、一方で慢心を生んでしまったり、企業に対して足元を見るような行動を起こしたりする可能性をはらむかもしれません。
わたしが、「他のライターの原稿料は知らない方がいい」と思う理由です。
「他ライターはどうでもいい」自分がどう成長するか
他の人の報酬を知ってもいいことないんですよね
現場を共にすることが多かったカメラマンと話していて「フリーランスの報酬」が話題に上ったとき、そのカメラマンもわたしと同じ意見でした。そう考える理由も概ね同じでした。
わたしは過去、他のライターの原稿料を気にしたことはなくて、一緒に仕事をした他のクリエイティブ職などに具体的な数字を聞いたことはありませんし、編集者などにそれに類する質問をしたこともありません。
それは、
- 原稿料は自分と企業との個的な関係から成り立つ
- 「仕事をする」と決めた時点で諸条件に同意している
この2つの理由からで、原稿料が不満であれば企業に相談すればいいですし、相談しても変化がなく、それでも不満なのであればその企業とは仕事をしなければいいだけです。
フリーランスは会社員とは違って仕事を選べます。
原稿料に不満があったとしても、何らかの理由でその企業と仕事をすると決めた以上、そんな自分を飲み込んでサバイブしていく必要があると思うんですね。
こちらに詳しく書きましたが、原稿料を含めて愚痴を言っている人は成長しない可能性が高いのではないでしょうか。
ネットで簡単につながれるからこそ注意
ちょっと話がそれましたが、社内体制のスリム化に伴うライティングの外注化は一層、進んでいくと思うので、ますます、同じ企業で複数のライターが仕事をするケースは増えていくでしょう。
だからこそ、「基本的に原稿料はライターと企業の個的な関係から成り立つ」と考え、他のライターの原稿料を気にしない方が精神的にいいとわたしは考えます。
そもそも、他のライターに企業の原稿料を聞くことは要注意。
今はSNSなどで簡単に他のライターとつながれるので、自分が気になっている企業があったとき、「その企業と仕事をしているライターを見つけてその人に原稿料を聞く」という選択肢を思い浮かべる人がいるかもしれません。
これは勧めません。
今まで書いたように、他のライターの原稿料を知ってもいいことはないと思いますし、そういった行動を取ったことで「企業に直接尋ねない」その人の姿勢がネガティブに捉えられる可能性があるからです。
最悪、信用をなくす恐れがあります。
原稿料に限らず、人によってはデリケートだと思うことを質問するときは、その人との関係性や質問するタイミング、その方法を十分に考えた上で成される必要があるのではないでしょうか。
これは取材にも通じることだと思います。
フリーライターの庄部でした。
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