「庄部さん、なんで製作物に消費税がかかるんですか? 消費税をもらったぼくたちはどうやって税金を納めればいいんですか?」
少し前のことです。
2016年、独立して間もないころにデザイナーの友人からクライアントへの請求方法について聞かれ、「消費税をつけとくんだよ」とアドバイスしたわたしは続いてそう質問されました。
ハッとしました。
そういえばよくわかってない…。確かになぜ、消費税が必要なのか。
わたしのように「そういうものだから」と何の気なしに原稿料に消費税をつけて請求しているライターはほかにもいるのではないでしょうか。
今回は、フリーライターのショウブ(@freemediwriter)が、ライターが知って起きたい消費税のことについて解説します。具体的な内容は下の通りです。
- 「消費税」とはそもそもどんな税金か
- なぜ原稿に消費税がかかるのか
- 消費税を国に納めなくていいの?
- 消費税は源泉徴収の対象になるのか
ライターであれば早めにこういった消費税の基礎知識を得ておいた方がいいでしょう。
より納得感を持ってクライアントに報酬を請求できますし、わたしのように友人から聞かれて「それはあれだよあれ、○%×$☆♭……」なんてごまかさなくて済みますから。
そもそも、「消費税」とはどんな税金?
「消費税」とはその名の通り、物を購入したりサービスを受けたりする際に消費者が支払う税金です。
土地や医療、授業料など消費税がかからない物やサービスも一部にはありますが、基本的には私たちは何かを購入し、消費する際には消費税が課せられます。
税金には国が徴収する「国税」と、地方公共団体が徴収する「地方税」があり、消費税は国税です。
ですから本来、消費税は国が徴収しないといけないものなのですが、わたしたちは何らかの物やサービスを購入した場合、その物やサービスを提供する人や店、企業に消費税を支払っていますよね。
これは消費者と税務署の手間を減らすため。
物やサービスを購入する度に税務署に消費税を支払っていると、国民と税務署双方の労力が膨大なものになってしまいます。
そこで一旦、お店や企業が消費税をもらっておいて、その後にまとめて税務署に納付した方が効率がいいのでこんな仕組みにしているわけです。
消費税のように、税金を負担する人と税金を納める人が異なる税金を「間接税」といい、両者が一致する税金を「直接税」といいます。
間接税には消費税のほかにたばこ税や酒税などが、直接税には所得税や法人税などが挙げられます。
なぜ原稿に消費税がかかる?
「物やサービスを購入する際には消費税がかかる」
これはライターと企業の関係においても言えることであって、ライターが企業に原稿を納品するということはつまり、企業からすれば原稿という商品をある金額で購入し、自社のために活用することを意味します。
ライターが商品の提供者であり、企業はその商品の購入者・消費者であるわけなので、企業はライターに対して消費税を支払う義務があるわけです。
自分の原稿を即物的な商品、たとえばコンビニのおにぎりなどと同じものと捉えるライターは少ないと思うので、わたしのように「なぜ原稿に消費税がかかるのか」ピンと来ない人は多いかもしれません。
「コンビニでお客さんがおにぎりを買う」という構図を基にすれば、コンビニ=ライター、お客さん=企業、おにぎり=原稿と原稿を利用する権利になります。
こう考えればイメージがしやすいのではないでしょうか。
ライターは消費税を国に納めなくていいの?
「じゃあ、企業からもらった消費税をライターは国に納めないといけないの?」
こんな疑問が浮かぶのではないでしょうか。
でもわたしは、消費税を税務署に納めてはいません。
なぜかというと、ライターとしてのわたしの年間の売り上げが1千万円を超えていないからです。
消費税をもらった事業者は、その税金を国に納めないといけない「課税事業者」と納めなくてもいい「免税事業者」に分けられます。
その線引きが事業者の収入の多寡であって、2年前の1年間の売り上げが1千万円を超えているかどうかで判断されるのです。
1千万円を超えていれば消費税を支払う必要があり、1千万円以下であれば支払わずにそのままもらっておいていいわけですね。
それと、業績が急に上がって前年の1~6月までの半年間で売り上げが1千万円を超えた場合も翌年から消費税を支払わないといけなくなるといいます。
なぜ売り上げによって消費税を免れる仕組みになっているかというと、経理上、消費税を計算するのは大変な手間がかかる上、小規模な事業者は大手に比べて価格競争に負けやすいからであるそう。
言ってみれば、「弱きものを守るため」の消費税免除なのです。
ですから、冒頭に挙げたデザイナーの友人からの「もらった消費税はどうすればいいの?」という質問には上のように答えればいいわけですね。
消費税は源泉徴収の対象になるのか
さて、最後にライターが知っておかないと経済的に損をしてしまう可能性があることについても書いておきます。
それは、「消費税は源泉徴収の対象にしなくていい」ということです。
源泉徴収
給与や報酬の支払い者(会社員であれば所属する会社、フリーランスであればクライアント)が給与または報酬から(会社員あるいはフリーランスの)所得税と想定される金額を差し引いて国(税務署)に納める制度。
所得税は前年1年間の所得(売り上げから経費を引いた儲け)に対してかけられ、所得によって税率が変わるので、最終的にはその年が終わるまで所得税額は確定しない。
でもそれだと国が税金を回収するのが遅くなるので、少額でもいいから前払いしてもらおうという仕組み。
ライターの原稿料は企業による源泉徴収の対象になるため、クライアントには通常、下の計算式で出た金額を請求します。
原稿料+消費税-源泉徴収税=支払い額(受取り額)
源泉徴収税の税率は報酬が100万円以下の場合は10.21%です。
となると、このときに疑問に浮かぶのが、源泉徴収税が「(原稿料と消費税を合わせた金額)×10.21%」なのか「原稿料×10.21%」なのか。
正解は後者で、原稿料の消費税は源泉徴収の対象にしなくていいいのです。
国税庁もホームページで認めていることです。
その一方で、クライアントの中にはこのことを知らないのか、原稿料と消費税を合わせた金額に源泉徴収税率をかける計算式を導入した請求書フォーマットを渡す企業もあります。
わたしが実際に経験したことなので、こんなケースはクライアントに相談してみましょう。
差額は微々たるものですが、ライターとしては消費税を含めないで計算した方が手取り額が増えるのでいいですよね。
詳しくは下の記事をご参考ください。
フリーライター庄部でした。
参考資料
「免税事業者は消費税を請求していい? フリーランスのための軽減税率対策」
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