「時代の変化によって、医療ライターの必要性は低くなるかもしれない…」「そうだとしても、どんな医療ライターであれば生き延びやすいだろうか」
わたしは2016年に独立しましたが、2019年ごろから「医療者ではない医療ライターのニーズは低くなるのではないか」と考えてきました。一方、「どんなライターであれば生き延びやすいか」も、ぼんやりですが、思案してきました。
今回は、「医療ライター」という枠組みの中で時代の変化を考えたいと思います。
ライターのニーズを考える上でのポイントは、「広く見て、細かく考える」こと。
ライターの人であれば、わたしの考え方を自身の属性に引き付けて展開させられるかもしれません。
参考にしてみてください。
専門家がわかりやすく発信するようになった
医療ライターの需要低下を予想した理由は、ずばりこれです。
医療の専門家である医師がブログやnote、ツイッターなどのSNSでわかりやすく医療のことを発信するようになりました。
わたしは日常的に医療者と原稿のやり取りをしており、医師の中で「文章が書ける」「文章が上手」と思う人はとても少ないのが実情です。
医師は広く見て「医療のプロ」ではありますが、商業的に文章を書いてきた人たちではありませんから、これは自然な状況だと思います。
しかし、「本当に読みやすいな」「これだけ書かれたらこっちの商売は…」と思うこともあるのですよね。
実用書はライターが代筆することが多いので医師の書く技術を知れませんが、代筆の可能性が低いブログやnote、SNSを見てこう感じるわけです。
学習能力の高い人が多いからでしょうか。
ひと昔前に散見された「専門用語のオンパレードで、素人が読んだら何を言っているのかわからない」ものはかなり少なくなっている印象です。
医療者が「医療ライター」を名乗るように
次にこれです。
「医療ライター」を名乗る医療者が増えてきました。
特に、看護師などの女性が家庭の事情も考慮して、「時間や場所を選ばずにできる仕事」として、ライターの仕事に挑戦するケースが目立ちます。
2021年3月現在、「医療ライター」とグーグル検索すると、3ページ以内にライターを名乗る医師、看護師、臨床工学技士1人ずつのブログやnoteなどが表示されます。
ポイントは「広く見て、細かく考えること」
- 医師がわかりやすく発信するようになった
- 医療者がライターの仕事をするようになった
この状況から、「医療者ではない医療ライターの需要は低くなるのではないか」と考えるのは、専門外の人であっても自然なことではないでしょうか。
わたしもそう思いますが、かといって、こうした状況を見て「ヤバいな…」と大きな危機感や焦りを感じるには至りません。
わたしが大切だと思う考え方は、「広く見て、細かく考えること」です。
どういうことか、医療ライターの仕事を例に説明しますね。
低下するニーズは「臨床の要約」
まず、「医師がわかりやすく発信するようになった」のは、主に臨床(病気の予防や治療)に関することです。
医師が話す難しそうな病気の話を一般向けにわかりやすく翻訳すること。これが医療ライターの仕事の一つでしたが、今はライターが書くメディアの医療記事を読む必要性が減ったように思います。
信頼する医師のブログやSNS、メディアへの寄稿文をいくつか押さえておけば「それで良し」「むしろ記者やライターが書く記事より信頼性が高い」と思う人が既に増えているか、これから増えていくのではないでしょうか。
医療者でない医療ライターの必要性が減るのではないかと考える理由の一つです。
ただし、これは先述の通り臨床情報に限定されます。
専門外の人は意外に思われるかもしれませんが、医療が関わる記事のジャンルは実は幅広いのですよね。
病気の予防や治療以外にも、下のテーマが挙げられます。
- ユニークな病院やクリニック、医師の紹介
- 各種症例や患者の声
- 薬や医療機器、医療サービスの紹介
- 医療制度の解説
- 医療機関の経営術やマネジメント論
- 医療者の就職、転職、キャリアアップの方法
医療者を読者とする専門メディアや紙媒体は、臨床以外の情報を扱っているものが多いのが特徴――これは、医療者への営業ツールとして活用されることも関係しています――なので、仕事を選ばなければ医療ライターが書く媒体は少なくありません。
詳しくは下の記事に書きました。
医療者ライターの多くはWebライター
次に、「医療者がライターの仕事をするようになった」と書きましたが、「医療者ライター」には、取材をしないWebライターの方が多い印象を受けます。
記事の質よりも量を重視するWebメディアの増加によって、Webライターのニーズは飛躍的に上がりましたが、かといって、取材ライターのニーズが劇的に下がるものではないでしょう。
玉石混交のネット情報があふれている今、取材記事は情報の根拠がすぐにわかるものですから、むしろその価値が見直されていくかもしれません。
さらに、ライティングだけに絞って考えてみても、「医療者であれば情報の質が担保されるか」というと、そうではないとわたしは考えています。
まず、医療の領域は幅広いので、一個人が取材をせずに自身の経験とネット情報などで正しく書ける記事は限られます。
さらに、「わかりやすく書けるかどうか」「読みやすく書けるかどうか」は人によります。
かりに取材をしたとしても、相手に楽しく話してもらいつつ、必要な情報を限られた時間内に聞いていくのは一種の技術。
こんなふうに、広く見つつ、細かく想像していくと、たとえわかりやすく情報発信をする医師が増えても、「医療ライター」を名乗る医療者が増えても、「すぐに自分の仕事がなくなるわけではない」とわたしは思うのですね。
専門性の中の専門性を高める
とはいえ、気になる動きではあるので、医療者ではない医療ライターがどうあれば生き延びやすいか考えました。
- 取材ができるライターになる
- 臨床以外の得意分野をつくる
- 自動集客する仕組みをつくる
この3つは方法になり得るのではないでしょうか。
ライターの中でWebライターが大半を占めるようになった現在、取材ができる人材は貴重だと思いますし、医療の中でも臨床以外の得意分野をいくつか持っておけばリスクヘッジを図りやすいでしょう。
医師の世界を例にするとわかりやすいですよね。
医師であっても内科が専門であり、内科が専門であっても消化器内科が専門である人がいるように、「医療ライター」の中でも、在宅医療に詳しいとか、医療訴訟に精通しているとか、AIなどのテクノロジーに関する知識が豊富とかいう人であれば、価値は上がるのではないでしょうか。
- 医師→内科医→消化器内科医
- ライター→医療ライター→医療テクノロジーライター
上の枠内のように、「専門性の中の専門性を持つ」ということですね。
加えて、ネットを活用し、ブログやSNSを運用して継続的に問い合わせをもらえるようにしておけば、安定性が高まるのではないでしょうか。
関連記事を下に添付しておきますので、興味のある方は参考にしてみてください。
フリーライターの庄部でした。
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