ライターはどの程度の写真が撮れればいいのか?
写真も撮るライター、いわゆる「カメライター」やそれを目指す人にとっては気になることではないでしょうか。
わたしの経験から結論を言えば、「さほど大したものは求められない」というのが実感です。
一方、会社での記者経験がなかったり、カメラマンの知人・友人がいなかったりして自己流で写真を撮り続けている人はそもそも、「写真のほどほどの出来」や「撮影時に気を付けるポイント」がよくわからないかもしれません。
そこで今回は、会社員記者として写真を撮り続けた経験を持ち、現在、カメラマンとも一緒に仕事をしながら情報交換をするフリーライターのショウブ(@freemediwriter)が、撮影や写真修正時のポイントなどを伝えます。
- どんな機材を持つといいか
- どんな写真だとダサいと思われるか
- マニュアルのお勧め初期設定
- 笑顔を引き出す写真撮影術
- 提出前のチェックポイント
内容は上の通りです。ご参考ください。
ライター庄部の写真撮影歴
わたしは2007年から2014年まで、タウン誌と新聞社の記者として取材時には写真も撮っていました。
新聞記事には写真が添えられていることが少なくありませんが、あれは記者が撮ったものなんですね。
大きなニュースやスポーツ取材などの写真は撮影を主に行う写真部の記者(ほぼカメラマンと同義)が撮りますが、それ以外の地域ニュースなどは記者が取材と同時に撮影しているわけです。
わたしも同様に撮影の経験も重ねつつ、2016年に独立。フリーライターである現在も案件によっては写真を撮ります。
わたしの撮影技術はどうかというと、「カメラマンや写真部の記者に比べると明らかに劣るが、平均的な新聞記者より少しいいのでは」といったところでしょうか。
わたしはタウン誌時代から写真を撮るのが好きでした。
他の記者よりも「いい写真を撮りたい」思いが強かったように思いますし、それは新聞記者として周囲を見ていても感じたことでした。
庄部は写真がいいから撮影担当として行け
新聞社の地方支局には本社のように写真部はありませんから、写真が撮れる記者は乏しいのが実情です。
わたしが地方を担当していたとき、写真が重要な取材の場合はデスクから上のように言われ、取材する記者に同行していました。
人物や風景だけではなく、甲子園や国体などスポーツの撮影も一通り経験しました。
当時の写真データはもう持っていませんが、フリーランスとして撮った人物写真を3枚載せます。
取材相手の人柄や媒体に求められる写真によりますが、割合、笑顔の写真を撮るのが好きですね。
医療の人物取材は動きがないので、必然的に上のような構図の写真が多くなります。
どんな機材を持つといいのか
さて、ここからはライター向けにわたしの考えを書こうと思います。まず、どんな機材を持つといいか。
今はスマートフォンで撮れる写真の質がかなり高く、持ち運びに便利な小型のミラーレスも普及していますよね。
一方のデジタル一眼レフは大きくて重く、持ち運びには不便です。
それはそうなのですが、それでもわたしは一眼レフを勧めたい。
なぜかというと、取材相手や顧客の満足度向上につながると思うからです。
わたしの経験にすぎませんが、独立してから「カメラマンと同じくらい質のいい写真」を求められたことはなく、写真がきっかけに仕事量が増減したと感じたこともありません。
期待値がこの程度なら、スマホやミラーレスで十分なんじゃ…
そう思ったことも一度や二度ではありませんが、それでもわたしはデジタル一眼レフを持っておいた方がいいと思います。
取材相手からすれば、デジタル一眼レフの方が「モデルとして撮られている感」が強いと思うんですよね。
スマホやミラーレスをちょこなんと持って「カシャ」「カシャ」と断続的に何枚か撮られてはい終わり、よりも、それらよりも大きいデジタル一眼レフで外付けのストロボ(スピードライト)で光もたかれ、「パシャパシャパシャー」と連続して何十枚も撮られる方が相手が感じる特別感が大きいと思うんです。
- 自分が撮られている特別感
- 非日常感
これは取材では案外重要だとわたしは思っていて、写真撮影によって相手が少しでも高揚感を感じてくれれば、取材全体の満足度が上がり、撮影後の雑談でいいネタが手に入る可能性も高まるのではないかと。
企業の編集者が新聞社や出版社あがりの人であれば、ミラーレスだと印象を落とす可能性もあるでしょう。
取材相手や顧客に安心感を与え、取材にエンターテイメント性を持たせる意味で「まだデジタル一眼レフは必要」というのがわたしの考えです。
ダサいと思われる写真
で、どんな写真だと企業側に「ダサい」と思われやすいかわたしの考えを列記します。
ボケている
ボケていると掲載できないかもしれないので、これは死活問題です。
ただ、
- ピントが合っていることを確認してから撮る
- 撮りながらときどき写真を確認する
- まずければ途中で設定を変える
- たくさん撮る
ことで「ボケた写真しかない」状況はほぼなくせると思います。
影が写っている
会社で記者や編集者として経験を積んだ人、プロのカメラマンからは「ダサい」と思われる筆頭でしょう。
ストロボを付けずにオートモードで室内などのやや暗い場所を撮ると内蔵フラッシュが起動、真正面から人物に光を当ててしまいます。
その結果、人物だけ過度に明るく、後方に影が伸びて周囲が暗い写真になってしまいます。
これは多くの場合、カメラにストロボを付け、天井に光を当てながら撮ることで解消できます。
天井に反射した光は上から柔らかく人物に注がれるため、写真が全体的に明るくなり、影が写らなくなるんですね。
背景が広すぎる、被写体が斜め
人物がメーンの写真で背景が広すぎたり、人が斜めになっていたりする写真。つまり、適切にトリミングと角度調整が成されていない写真はよくありません。
これらはライターが撮影後に修正できることなので、編集者などによっては「手を抜いている」と思う可能性があります。
人や物が斜めになっていないかどうかは、写っている物と物の境目に着目するとわかります。
壁と天井の境界線、壁と壁の境界線などを見ることで物と物とが水平・垂直になっているかどうかを確かめられます。
歪んでいれば境界線が水平・垂直になるよう角度調整してください。
オートモードは使わない
写真の質を上げるためにわたしが大切だと思うのは、「基本的にオートモードを使わない」こと。
写真の出来は、ストロボ以外だと
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO感度
- ホワイトバランス
の数値でも左右されるため、最初は面倒かもしれませんがそれぞれの概念を勉強し、早めに理解・体得することが重要です。
ライター庄部のマニュアル設定値
ですから、わたしは外でも中でもマニュアルモードで撮っています。
わたしが初期設定している数値は下の通り。
絞り(F値) 4.5
シャッタースピード 125
ISO感度 800
屋内の撮影でストロボをたく場合、これらをデフォルトにしておくと変動幅が小さくて楽ではないでしょうか。
会社員だったときに撮影の好きな先輩に教わった構成ですが、独立してからカメラマンに尋ねても「それでいいと思う」とのことでした。
写真の質を上げるためのポイント
続いて、質を上げるためのポイントを。
数を打つ
たくさん撮るほど上に挙げたリスクを回避しやすくなるので、最初のうちは特に意識した方がいいでしょう。
わたしは会社員時代、一回の取材で数十枚から数百枚の写真を撮っていました。スポーツ取材の写真だと200枚、300枚を超えることも珍しくありませんでした。
フリーライターとして現場を共にするカメラマンの動きを見ていても、「やはりある程度の数を打つ必要はある」というのが実感です。
会話をしながら撮る
わたしの場合、自然な表情やしぐさを撮りたいときは会話をしながら撮るようにしています。
相手を褒める
「いや、素晴らしいですね」「先生、いい表情です」「いいですねいいですねいいですね!」パシャパシャパシャー
取材相手の人柄にもよりますが、笑顔の写真を撮りたいときはこんなふうによく褒めるようにしていますね。
場合によっては「こんなに褒めるか」と思われるくらい褒めます。
すると、相手によっては「思わず笑ってしまった」という感じで笑みがこぼれて素敵な表情を押さえられることもあります。
提出前のチェックポイント
先に書いた「ダサいと思われる写真」と重複しますが、撮った写真を企業に提出する前のチェックポイントを。
- ボケていないか
- 暗くないか
- 背景が広すぎないか
- 斜めになっていないか
適時、トリミングと角度調整、明るさの調整を行うようにしましょう。
写真の上手なライターは少ない
これもわたしの感覚に過ぎませんが、ライターの中で写真の上手な人はかなり少ない印象です。
ライターが撮る写真は「そこそこの出来でいい」と話しましたが、それにも至らないものが少なくないように思うんですね。
- 少しボケている
- 人物が無表情すぎる
- 証明写真のように姿勢が硬い
- 暗い
- 背景が広すぎる
- 被写体が斜めになっている
上の要素が複数合わさっているものが多いのですが、まず①と④~⑥に関してはひと手間をかけることで改善できます。
②と③については撮り手のホスピタリティーなどが関係しますが、もし取材相手が不愛想ではない人の場合、むすっとした感じの写真だと読者に誤解を与えかねません。
「この人らしい表情を撮ってあげたいな」と思うだけでも、ライターの頑張りや写真の質が変わるのではないでしょうか。
「写真の質で仕事が増減したことはない」と書きましたが、それでも「写真が素敵だった」「写真もいいね」などと取材相手や編集者に喜ばれたことがあるので、写真に課題を感じているの人はこれらのことを考えてもらえるとうれしいです。
フリーライターの庄部でした。
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