インターネット上で仕事の受発注をするクラウドソーシングサービスの普及により、ライターの仕事はとてもチャレンジしやすいものになりました。
しかしながら同サービスは低価格の仕事が大半で、苦戦している人が多いのも事実です。
どうすればライターとして独立し、「食えるフリーライター」になれるのか。
「ライターの世界がどんなものか」というところから、2016年に独立したフリーライター・ショウブ(@freemediwriter)の持論を書きます。
ライターに資格は要らない
「ライター」には明日からでもなれます。「わたしはライターなのだ」と言えばいいだけなので。
そもそも、ライターになるのに資格は要りません。
本を書く人がいれば雑誌の記事を書く人がいて、ウェブメディアの記事を書く人がいれば企業のオウンドメディアに原稿を提供する人もいる。商品の解説文を書く人がいれば、講演会のスピーチ原稿を書く人もいる。
原稿を書いてお金をもらっている人、すなわちライター。
ライターと一口に言っても仕事はさまざまなのです。「記者」と「ライター」の違いについてはこちら。
自由度は高いけどシビアな世界
そんなふうにライターは自由度の高い仕事ですが、ただ、これ1本で稼ぐのはけっこうシビアです。
少なくとも月に20万は稼ぐ必要があるとして、原稿料が1本1万円だと20本書かないといけません。
取材場所に移動して、取材して、テープ起こしをして、書いて、となると、2、3千字の案件で少なくとも5時間はかかります。時給換算すると2千円です。
アルバイトより多少はいいんですが、これをずっと続けていくのはしんどいですよね。しかもWebの仕事を含めると、1万円の案件は決して珍しくはないものです。
企業とフリーランスを仲介をするクラウドソーシングサービスだと1本数百円なんて仕事もざらにあります。
つまり、多くの人の場合、ふらっとライターになってガツッと稼げる世界ではないんですね。
じゃあ、どうやって食えるライターになるか。わたしの経験を踏まえて話します。
まずは会社員ライターになる
食えるフリーライターになる可能性を大きく高める方法が、会社員としてライターまたは記者、編集者になって経験を積むこと。その後に独立という流れです。
会社に身を置いていればライターとして経験を積みながら給料をもらえます。毎月決まったお金をもらいながら勉強できるのはかなりお得。
経済的に困ることなく経験を重ねられて、フリーライターとして独立したときはそこそこの取材・ライティングスキルが備わっている。
場合によってはフリーとして仕事をもらえそうな人と既に付き合いがあることも考えられる。
未経験からいきなり独立するよりもスムーズに仕事を獲得できる可能性が高まるわけです。
わたしのクライアントの中にも「やっぱり元記者じゃないと使えないね」と話す編集者はいますし、わたしとしても他のフリーライターが書いた原稿を読んで「記者をやっといて良かった」と胸をなでおろしたことは一度や二度じゃありません。
ライターの仕事はクライアントワーク。
稼ぐライターであるためには、企業が頼みたいと思うライターであることが必要で、その要素の一つに取材とライティングの基礎ができていることが挙げられます。
会社員ライター、会社員記者であれば多くの場合、組織に自分の記事をチェックしてくれる先輩がいますから、第三者にしっかり手を入れてもらい、自分の記事がきれいに整えられている様を直に見られます。
これがでかい。
未経験から独立した人だと、よほど面倒見のいい編集者と出会わない限り、自分で自分を育てていくしかありません。
会社員記者として人の力を借りて成長していく方が短期的にはスピードが速いです。
会社員ライターになるためには会社が実施する採用試験を受ける必要がありますが、中途ですぐにライターになりたい人は、転職エージェントを利用するという手もあります。
エージェント経由でいろんな情報がすぐに手に入り、うまくいけば最短1ヵ月で内定を得られます。
今ではウェブメディアの増加に伴って未経験OKにしている会社も増えている印象。
クライアント企業の中にも「未経験から中途で入社しました」と話す新人ライターはいますし、わたしも転職支援会社を利用してライターとして内定をもらったことがあります。
詳細はこちら。
クラウドソーシングサービスで実績を作る
クラウドソーシングサービスを利用してこつこつと実績を作って独立、という流れもあります。
ライター未経験の場合、いきなり会社と業務委託契約を結ぶのは難易度が高いですから、いろんな仕事がたくさんあるクラウドソーシングサービスを利用して自分に合ったものから手を付けるのも方法の一つ。
クラウドソーシングサービスでは安価な案件が大多数を占めますが、中には同サービスだけで月に20万、30万稼いでいる人もいます。
ライターの仕事に興味があるのであれば、情報収集に時間をかけるよりもまずは実際に仕事をしてみることが大切。
少しでも早く、たとえ小さくてもいいから実績を作ることが重要です。
そして、自分で「人にも見せられるな」と思う記事が3つ集まったら、それらを自分のポートフォリオ(実績集)としてまとめ、ライターを募集している会社に連絡を取ってみましょう。
直接契約の方が報酬が高いことが多く、「食えるライター」への可能性が開けてきます。
わたしも独立前にクラウドソーシングサービスを利用し、書いた記事をポートフォリオの一部に組み込んで営業して、企業と契約を結んだことがあります。
クラウドソーシングサービスを利用して仕事を獲得し、実績を作って、企業に営業。
未経験から食えるライターをめざす場合、これは今、オーソドックスな方法です。
ただ、利用には留意してほしい点もあります。クラウドソーシングサービスで募集されている仕事には、本やネットにある既出情報をリライトするものが少なくないため、「本当にこのテーマを取材せず世に出していいのか」という視点は持ってほしいと思うのです。
自分の経験や知識で対応できるものや自分の考えをコラムとして書くのであれば問題ないこともありますが、「自分の全く知らない分野をリライトするだけで果たしてどれほどの記事ができるのか」「読者にむしろ悪影響を及ぼすのではないか」と想像してほしい、というのがわたしの考えです。
詳しくは下の記事に書きました。
ブログを運営し価格交渉権を得る
食えるライターになるためには、報酬の高いクライアントを一定程度、獲得しなければなりません。
先ほど挙げた価格帯の仕事ばかりだと、数をひたすらこなさなければならず、新規案件を獲得するための動きができなくなり、既存の仕事に忙殺され、やがて体調を崩してしまう…。
そんなシナリオを容易に想像できます。
では、報酬の高いクライアントをどうゲットするか。
仕事を得る経路は①営業、②紹介、③問い合わせ――の3つのパターンしかありません。
この中で最もコストパフォーマンスが高いのが③の「問い合わせを得る」です。
ブログを運営してライターとしての属性を表すワードで検索上位を取り、定期的に企業から依頼を受ける仕組みをつくることができると、営業コストが大幅に減ります。
わたしは独立1年目にブログを始め、3カ月後には「医療ライター」などのワードで1ページ目に表示されるようになりました。
それから月に1、2件の頻度で企業から問い合わせをもらえるようになり、成約した企業がリピートしてくれることもあって、独立2年目からは営業を全くしていません。
営業しなくて済むようになるのがブログを運営する大きなメリットですが、その中に「価格交渉権を得られる」という本質的な利点が含まれています。
これが営業、紹介よりも優れているところです。
人力で営業する場合、どうしても企業が「上」、フリーランスが「下」の立場になりやすい。基本的には企業の定めている報酬にうなずくしかありません。
しかし、問い合わせをもらう形で出会ったとすればどうでしょうか。
メールは「ライターを探していて、ぜひ●●さんにお願いしたい」と始まり、「いくらくらいでお仕事可能でしょうか?」とこちらの考えを尋ねてくれるのです。
もちろん、企業があらかじめ報酬を定めていて、その価格でどうか、という形もありますが、その場合でもこちらから営業するケースとは違い、相談しやすい。
また、問い合わせ者の目のつくところに自分が希望する報酬や過去に成約した価格帯を記載すれば、マッチングの可能性を高められます。
ブログを運営して検索上位を取り、定期的に問い合わせをもらえるようにして、ときに価格交渉権を得て、高報酬のクライアントの仕事をゲットする。
お勧めです。詳細はこちら。
取材ができるライターになる
わたしは会社で記者をしていたので、独立する前まではライターのことを「取材をして原稿を書く人」と思っていました。
でも実際は違っていました。
特に今はクラウドソーシングサービスの普及によってネットや書籍などの情報を頼りに原稿を書くライターが増えています。
ネット情報をリライトする在宅ライターと、取材ができるライターのどちらの方が市場価値が高いかと言うと、それは断然、後者です。
在宅ライターの仕事はありものの情報を組み合わせるといった作業的な要素が大きく、やる人をさほど選びません。
その一方、取材ライターは取材相手とスムーズにコミュニケーションを図りながら、面白い情報を引き出していくことが大きなミッション。
書けるプラス聞ける人でなければならず、在宅ライターに比べて難易度が高いためライター全体に占める数が多くはない。
報酬も在宅案件より高い。
会社で記者やライターを経験しない、できない人であれば、ぜひクラウドソーシングの取材案件に挑戦して経験を重ねることを勧めます。
全く知らない人と1時間以上も顔を突き合わせるわけですから、それは最初は緊張します。しかし、取材スキルは経験によって磨けます。
そして何より経験を重ねることによって、「私は取材ができなくはない」「いや、できるんだ」と自信がつき、フットワークが軽くなります。
取材力を高めるためには、個人的に気になっている人を取材して、ブログに記事を書く方法もあります。
わたしも気になるフリーランスを過去に3人取材してブログに載せました。その一つがこちら。
好きな取材分野を見つける
「専門性があると強い」
ライター業界でよく言われることですが、これは確かにそうだと思います。なぜなら、わたし自身、独立してから医療分野の取材だけで食えているからです。
たとえば医療の取材で「消化器がんの予防・治療」がテーマだったとき、
A「胃がんはどうすれば予防できるのでしょうか」
B「胃がんの予防法について、まずは発症原因になり得るピロリ菌の有無を調べることが大切だと話す医師が多いのですが、先生はどう考えていますか」
ゼロベースで聞くライターAよりも、予備知識を持って聞くライターBの方が取材相手の医師も答えやすいと思うんですよね。
ゼロベースで聞く方が取材がうまくいくケースもあるのでこの限りではないんですが、医療や福祉、金融など専門性が問われる分野ではやはり、その分野の取材経験があるライターをクライアントも求めます。
わたしのブログに企業から定期的に問い合わせがあることもそれを証明しています。
では、どうやって専門性を高めていくか。
方法論に限れば難しくはなくて、先ほど挙げたようなことです。
- クラウドソーシングサービスで自分が狙っている分野の仕事に応募する
- その分野の仕事を集中的にもらえそうな会社に営業する
わたしの場合は独立前に医療のウェブメディアと医科・歯科のクリニックのホームページを作っている会社に営業して直接契約を結び、独立してから医療取材の経験を増やしていきました。
その2社はともにホームページや求人サイトでライターを募集していて、医療取材の経験のないライターも面談を通して採用していたんです。
こんな懐の広い会社を探すといい。
ただ、好きな分野がないのに無理に専門性を高めようとするのは一考の余地があります。
中見出しを「専門性をつくる」にしていないのには理由があって、無理に専門性をつくろうとするのは、自分の首を絞めることにつながる場合があると思うのです。
好きでもないのに「稼げるから」「取材している人が少なそうだから」と仕事内容を絞ったとして、うまくその分野が好きになればいいですが、そうでなかったときは悲惨ですよね。
楽しくない取材をすることは、フリーライターの醍醐味を大きく損ねてしまう。
加えて、専門性の高い分野でのライバルは「これを取材するのが堪らなく好き」という人が多いと思うので、その人たちの中で頭一歩抜きんでるためにはやはり、どうしても「好きであること」が必要になってくると思います。
まずは専門性にはこだわらず、いろんな分野の取材をしてみるといいのではないでしょうか。
いろんな分野の取材をすることが好きでそれで食えるのであれば続ければいいし、その中で「これだ!」と思うものがあればその分野の仕事を増やせばいい。
フリーランスをやっていく上でまずいのは、他人が言ってることやネットの情報に踊らされることです。
情報はあくまでも傾向性を示すものであってその範疇を出ません。その情報が自分に当てはまるかはわからないわけです。
真実は自分がチャレンジしてつかみ取っていくものなので、傾向の話はあくまでも参考程度に留めた方がいいでしょう。
だから、専門性については「楽しくて気付けばこれだけ取材していた」「この取材ばかりになっていた」という形が本人もクライアントも取材相手も幸せなあり方だと思います。
精神状態を安定させる
食えるライターになるにはこれが最も大切かもしれません。
スキルはもちろん大事ですが、フリーランスの人柄も仕事が来るか来ないかの要素になるからです。
いつもムスッとしていて何だか相談しづらい人よりも、にこにこしていて「うんうん」と話を聞いてくれる人の方が良くないですか?
その上でちゃんと自分の意見も言ってくれる人。
わたしはそんなににこにこしていませんが、クライアントと上下なくフラットにいろいろ話したいなとは思ってます。
フリーランスは孤独なんですね。
身近に相談相手がいないことが多いですし、基本的に全部自分で決めないといけませんし、自分の出した原稿に対してうんともすんとも言わないクライアントもままいます。
孤独で神経過敏になりやすいのか、クライアントの発言に対して過剰に反応してしまい、クライアントを攻撃してしまう人もいると聞きます。
それに、既存の仕事に甘んじていると、周囲が自分をほめる人だけになってしまって変にプライドが高くなり、指摘されると不機嫌になってしまう人もいるようです。
基本的に穏やかで、感情的にならない。精神的に自立している。
これがわたしの目指すことで、クライアントからも求められるフリーランス像ではないかと考えています。
人に依存すると、嫉妬や敵対心などのネガティブな感情が生まれやすくなります。だからこそわたしは、特定の企業に頼らなくていいようにブログを運営しているのです。
孤独に悩んでいて身近にフリーランスがいなかったとしても、今はツイッターで簡単に人とつながれますから、そこから交流できそうな人を探すとか、仕事で一緒になったフリーを飲みに誘ってみるとか、クライアントで気の合う人を見つけるとか、やり様はいろいろあります。
穏やかな自分でいられる仕組みづくりは今後も考え続けていきたいことですね。
新規ライター向けサービスを試す
ここからは追記です。
近年、働き方の多様化に伴って、副業紹介などライターにもマッチしそうなサービスが次々に登場しています。
こういった新規サービスを利用するのも手でしょう。
わたしの場合はタイミングが良かったこともあり、ブログがうまくいきましたが、そうでなければ可能性のありそうなサービスはとりあえず利用してみると思います。
まずは手数を打つこと、行動量を増やすことが大切で、その中で自分に合った方向性――わたしで言えばブログによる自動集客化がそう――を見つけることが大切ではないでしょうか。
そして、「これだ!」と思うスタイルに出合えたらそこに思考と行動を集中投下し、槍を研いでいくのが生き残る王道の一つだろうと考えています。
先述のクラウドソーシングサービスと合わせて知ったものを挙げるので、参考にしてみてください。
「まずやってみる、すぐにやってみる」マインドはフリーランスとしてサバイブする上で大切かなと。
クラウドソーシングサービス
スキル売買サービス
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