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【記者レポ】文章作成支援ツール「文賢」の特徴は?説明会の内容紹介

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果たして、自分は正しく文章を書けているのだろうか…?

誤字脱字はないか、言葉の使い方や表現は適切か、読みやすくわかりやすく書けているか。

記者やライター、ブロガー、企業広報など文章を書くことを仕事にしている人にとって、常に課題になるテーマではないでしょうか。

そんな書き手をサポートしてくれるクラウドツールの機能や精度はどうなのか興味があったので、確かめてみました。

わたしが今回、使ってみたのは、Web制作やWebマーケティング事業を展開する「ウェブライダー」という企業が開発・販売する「文賢

名前を聞いたことのあるライターは少なくないでしょう。

記事は2回構成で、初回は同社が主催する無料説明会で社員の方に聞いたことを、2回目は実際に使ってみた感想をフリーライターのショウブ(@freemediwriter)が書きます。

説明会では文賢の機能と特徴について教えてくれたので、その内容を網羅したいと思います。

文賢説明会の概要

同社は2020年現在、月に3、4回のペースでWeb会議ツール「Zoom」を使って無料説明会を開いています。

わたしが参加したのは8月25日。参加者は9人で、同社からは広報担当の女性社員とシステムなどに詳しい男性社員の2人が対応してくれました。

広報の方が中心となって説明、口頭とチャットを介して合間に参加者からの質問を受け付け、参加者からの質問に対しては男性社員も説明に加わる、という形式でした。

機能や特徴に関する説明では、広報の方が実際に文賢のシステムに文章をペーストし、システムがどう反応してどんなことを知らせてくれるかを見せてくれました

時間は1時間ほどで、説明してくれた内容は下の通りです。

  • ウェブライダーとは
  • 文賢を開発した経緯
  • 文賢の機能とその特徴

これらに加えてわたしがいくつか質問したので、その質疑応答の模様も後述します。

文体は読者が読みやすいよう、社員の方の話口調(一人称)に統一しますが、読者の理解のしやすさなどを考え、わたしが内容を追加したり省略したり、また表現を変えた部分があるのでご了承ください。

ウェブライダーとは

ウェブライダー」は京都と東京にオフィスを構える企業で、「本来の価値をわかりやすく伝える」をコンセプトにさまざまな事業を展開しています。

『沈黙のWebライティング』『沈黙のWebマーケティング』という書籍を出版したり、Webライティングに関するセミナーに登壇したりしているほか、複数のメディアを運営しています。

情報や物の素敵な選び方を伝える「Betters(ベターズ)」、ワイン初心者向けに選び方を教える「美味しいワイン」、スタッフが足を運んでおいしいと思ったお店を紹介する「美味い(うまい)居酒屋」がそうで、いずれも「ユーザーに向き合ってコンテンツを作ること」を大切にしています。

文賢を開発した経緯

文賢は現在、1000以上という多くの企業・個人さまに利用されていますが、文章作成ツールがたくさんある中で、なぜわたしたちがこの製品を開発したかというと、それは「人の気持ちを考える人を増やして、コミュニケーションで傷つく人を減らしたい」と考えているからです。

インターネットの発達と普及によって、多くの企業がオウンドメディアやSNSを運営するようになりました。

わたしたちが日常的に目にする言葉も増えたように思いますが、一方で、不適切な発言による「炎上」も起きるようになりました。

ネット上に一度文章をアップしてしまうと、それがたとえ昔のことであってもさかのぼって見ることができますし、削除してもGoogleにインデックス(検索エンジンのデータベースに記録されること)されていれば検索結果に表示されてしまいます。スクリーンショットを保存される可能性もあります。

自分の文章が半永久的に残ってしまうかもしれない時代だからこそ、一つひとつの言葉を大切に扱う必要があるのではないでしょうか。

わたしたちはどんな文章だと読みやすく、わかりやすいかを研究し、その内容を再現性の高い形にしようと社内専用ツールの開発に取り組みました。

「これ、世に出せば役立つんじゃないですか?」

後に、クライアントの方にそうアドバイスしてもらったことがきっかけで一般向けにアレンジしたものが文賢です。

文賢のコンセプト

  • 「情報」と「感情」が誤解のないよう伝わるために
  • 読みやすくわかりやすい文章の作成を支援

文賢のコンセプトは上の通りで、これらの実現のために以下の機能を備えています。

  • 校閲支援機能
  • 推敲支援機能
  • アドバイス機能
  • 文章表現機能
  • 辞書機能
  • サブ機能

文賢の基本的な使い方

文賢はクラウドツールであり、Web上でシステムにログインすると簡単に使うことができます

チェックしたい文章を画面のテキストエリアにコピーペーストすれば、すぐに文賢独自のアドバイスが表示されます。

では、個々の機能について説明しますね。

校閲支援機能

校閲支援機能は文字通り、校閲をサポートするもので、以下のことをチェックしてくれます。

  • 誤字脱字
  • 間違った表現
  • 重複表現
  • 認知のされ方が変わってきた表現
  • 差別的な表現――など

わたしたちは、「読みやすくわかりやすい文章とは、余計な情報が少なく、また読み手に与える違和感が少ない文章」だと考えています。

こうした考えをベースに、校閲支援機能でチェックする言葉を決めています。

実際に、ある文章を文賢でチェックしてみましょう(社員の方が文献の画面を見せつつ実例を紹介してくれました)。

文賢が指摘した「負けずとも劣らない」は、正しくは「勝るとも劣らない」です。

「もし万が一」は、「もし」と「万が一」が同じ意味の重複表現だと教えてくれていますね。

「なしくずし」にも反応しました。この言葉は本来、「物事をポジティブに少しずつ変えていくこと」を意味しますが、最近は「うやむやにする」の意味で使われていることが増えています。

言葉は時代とともに変わるもので、本来とは違う意味であっても認知されていれば伝わるわけですが、本来の意味を知っていれば誤解のないように言い換えることが可能です。

このように、時代の変化によって認知のされ方が変わってきている言葉も文賢はチェックしてくれます。

「ビジネスマン」にハイライトがつきましたが、これは「マン」に男性の意味があるからで、男女を問わない「ビジネスパーソン」に言い換えた方がいいのではないかと伝えてくれています。

校閲支援機能についてよくある質問

誤字脱字の精度についてよく質問されるのですが、これに関しては「データベースの情報量が多いほど精度が上がり、逆にデータベースにないものはチェックできない」という回答になります。

日本語はとても複雑で、システムのアルゴリズムを駆使しても見つけられないものがあるのが現状ですが、弊社では日々、チェックできるデータを増やしています

推敲支援機能

次に説明する「推敲支援機能」。わたしたちはこれが文賢の一番の強みと考えています。

私たちは、「読みやすくわかりやすい文章」について、「リズムが良い、読者が楽に読める文章」だと考えているので、そういった文章に悪影響を及ぼす恐れのある要素を同機能ではチェックしてくれます。

具体的には、以下のことです。

  • 指示語が多用されていないか
  • 読点が多すぎないか
  • 同じ文末表現が多用されていないか
  • 同じ接続詞が連用されていないか
  • 同じ助詞が連用されていないか
  • 二重否定表現が使われていないか
  • 平仮名と漢字の使い分けは適切か
  • 冗長な表現でないか
  • 日付や数字に誤りがないか――など

「それ」「これ」などの指示語が多いとわかりづらい文章になってしまいますよね。

今はスマートフォンで文章を読む人が多く、小さな画面だと表示される文章がパソコンよりも少なくなってしまうので、指示語とそれが意味する内容が2、3行離れるだけでも読みづらいと感じる人がいるかもしれません。

推敲支援機能が指摘する「冗長な表現」の例としては、「~することができる」「~ということ」などが挙げられます。こういった言葉もたくさん使い過ぎると文章が引き締まらなくなります。

では、実例を見てみましょう。

数字にハイライトがついていますが、これは「念のために確認してみましょう」という意味です。

年数や日付などの数字は重要な情報である可能性があるので、確認を促すようにしています。必要なければ反応させないようにすることも可能です。推敲支援機能ではチェック項目をカスタマイズできます。

「未だ」にハイライトがついていますね。「未だ」は「まだ」とも「いまだ」とも読めるので、平仮名書きの検討を伝えてくれています。

同じ文末表現を3つ続けて使っている部分も指摘してくれていますが、これは文章が単調な印象になる恐れがあるためです。体言止めの活用を助言してくれています。

「しかし」という接続詞を2回続けている部分にもハイライトが。これも読みやすさに悪影響が出る可能性があるためです。

同じ助詞を連続使用している部分も同様です。「やると決めたことは打ち込まないではいられない」の箇所は、「は」という助詞を続けているために読みづらくなっています。

またこの部分では、否定語を2回使用する「二重否定表現」が使われています。情緒的にあえて使っている場合は問題ありませんが、遠回しな言い方にはなるので肯定的に言い換えた方が良い可能性があります。

今回は、「やると決めたことはとことん打ち込む」と書き換えましょう。

一文が50文字以上あるにもかかわらず読点(、)が打たれていない部分も読みづらくなる可能性があることからハイライトがついています。

「下さい」を平仮名の「ください」に、「一人一人」を漢字と平仮名に分けて「一人ひとり」にした方が視認性が高まるのではないか、といったアドバイスもしてくれていますね。

アドバイス機能

続いて、「アドバイス機能」です。これは、相手に誤解がなく情報や感情が届くように、主に文脈について文賢がアドバイスしてくれるものです。

アドバイス機能は先述の校閲支援機能、推敲支援機能とは違って文賢のアルゴリズムが反応するものではなく、固定のチェックリスト形式になっています。

発信する際に気を付けた方がいいことが10項目並んでいます。

「わかりやすい文章をつくるためのチェックリスト」

  1. 「主語」と「述語」の距離は近いか
  2. できるだけ最初に「結論」を書くようにしているか
  3. 「箇条書き」を用いて、整理できる箇所はないか
  4. 長い修飾語は「前」に、短い修飾語は「後」に書いているか
  5. 読み手に共感してもらうための「感情表現」を意識しているか

「公に発信する際に注意すべきチェックリスト」

  1. 今日は誰かにとってセンシティブな日のため、投稿を「自重したほうがよい日」ではないか
  2. いたずらに煽(あお)っていないか、ただ読み手を不安にさせて放置していないか
  3. LGBTなど多様な愛や性の在り方に配慮できているか
  4. パワハラやセクハラだと受け取られる内容でないか
  5. 過去に投稿した内容との一貫性に問題はないか--出典:ホームページ

 

中でもクライアントさまに評価していただいているのが、「今日は誰かにとってセンシティブな日のため、投稿を自重したほうが良いのではないか」問う項目。

こちらをクリックするとグーグル検索の「今日は何の日」に飛ぶので「便利」とのことです。

顧客企業の中には、「このリストを見てから記事を送るように」と関係者に周知しているところもあると聞きます。

チェックリストの項目は自分で独自に追加することが可能です。

文章表現機能

「文章表現機能」は、語彙力を増やすサポートをするものです。

こちらは校閲支援機能・推敲支援機能と同じように、挿入された文章に反応して情報が表示されます。

たとえばグルメ系のメディアで食べ物のおいしさを表現する場合、「おいしい」という言葉だけだと伝わりづらいことがありますよね。

そんなときに、「肉汁がジュワーっと口の中に広がる」など複数の言い換え候補を提示してくれるのです。

こちらはアドバイス機能と同じように、自分でお気に入りの言い回しを追加することができます。

辞書機能

どの言葉を漢字で記載するか、もしくは平仮名を用いるか。企業が独自にルールを設けている場合があります。

そんなときに役立つのが辞書機能です。

オーナーアカウントから最大3つまでカスタマイズしたオリジナルの辞書を作ることができるほか、ユーザー個々も自分に合ったものを作成できます。

サブ機能

  • 文字数カウント
  • 漢字の使用率表示
  • フォントの切り替え
  • 音声読み上げ機能
  • 印刷機能――など

サブ機能の主なものは上の通りです。

漢字の使用率がわかることで、文章の全体的な印象を想像することができます。

「漢字が19%以下だと平仮名が多すぎるのでは」「40%以上だと漢字が多すぎて硬い印象になっているのではないか」といったことですね。

「相手との関係性で適切な表現は変わる」

文賢の機能をまとめます。

  • 校閲機能と推敲支援機能→より良い文章を書くための改善点がわかる
  • 文章表現機能→自分では思いつかない表現がわかる

文賢の各機能で表示される内容は、誤字脱字などの明確な誤り以外は全て「~ではないですか?」といった問い形式です。

システムが一方的に指示することはなく、「念のため確認しましょう」と促すに留めています。

こんなふうに答えを断定していないのは、「言葉選びに完全な正解はない」とわたしたちが考えているためです。

適切な表現は相手との関係性で変わるもの。わたしたちはあくまでも問いを投げかけることで、ユーザーさまに考えてほしい、というスタンスなのですね。

文賢の利用を機に、言葉を一つずつ選んでいく大切さを感じていただけたらうれしく思います。

ライター庄部からウェブライダーへの質問

社員の方の説明、質問への回答はともに丁寧でした。感じが良く、聞きやすかったですね。

それでは最後に、わたしと社員の方の質疑応答も紹介します。

――文賢がリリースされた時期と、どうやってこれらの機能が稼働しているか基本的な仕組みについて教えてください。

文賢が一般向けに提供され始めたのは2017年10月です。

システムはウェブ上のサーバーで稼働していて、校正しているのはサーバー上のプログラムです。人の手は入っていません。

――システムは定期的にブラッシュアップされているのでしょうか。

はい。月に1度は必ずアップデートするようにしていて、チェックロジックの精度を上げています。このときに新しい機能が追加されることもあります。

――ホームページを見ると、一般企業の利用が多い印象です。メディアとしては「サンケイリビング新聞社」の名が挙がっていますが、この企業以外にメディアからも利用されているのでしょうか。

公表している企業さまには事前に「名を出していい」という許可をいただいているため、この場でそれら以外の会社のお名前はお伝えできませんが、メディアにも利用されています。

1社、2社という規模感ではありません。

――広報の方が話された事例では、校閲支援機能が送ったアドバイスに根拠が記されていました。これは必ず入るものと考えていいのでしょうか。

根拠を含めた注釈はなるべく入れるようにしています。

ただし、「明確な理由はわからないけれど、なぜかツイッターで炎上したケース」などにおいてもシステムが反応するときがあり、このような場合は根拠が表示されない可能性があります。

――今回見せていただいた事例の文章は1人称の「です・ます」調でした。人称と文体によって機能の精度は変わり得るのでしょうか。つまり、3人称の「だ・である」調に変わった場合に変化があるか、という意味です。

それはないと考えられます。

――ホームページの「料金プラン」の画面で「1ライセンス」とありますが、「ライセンス」とは「利用者」と同じ意味でしょうか。

そうです。「1人の利用者に対して1つのライセンス」と理解していただれば。

――スタンダードプランでは初期費用が1万800円(税別)かかります(別途、月額1980円)。高い印象を受けますが、なぜ初期費用がかかるのでしょうか。

アカウントの用意にかかる費用、と弊社ではお伝えしています。

※文賢の価格設定には思うところがあるので、次回の記事にわたしの考えを書きます

――ホームページを見たところ、解約方法と解約できるタイミングがわかりづらいと思いました。教えていただけますか。

解約に関しては支払い方法によって変わります。

オンライン決済サービス「PayPal」経由のクレジット払いの場合、30日ごとにライセンスが更新されるので、その途中で解約していただくと次の支払いがキャンセルされます。

一方で、銀行振り込みの場合は契約期間が180日間(半年)なので、その間に解約していただいても次の更新日までは機能を利用できます

両方とも日割りでの返金はできません

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わたし以外の参加者からもチャットで一つ質問が寄せられました。文賢で一度にチェックできる文字数の上限を尋ねるもので、回答は「3万文字」でした。

「文賢」公式サイト

続編はこちら

実際に文賢を使ってみました。文賢に「合いやすい人」と「合いづらい人」がいるだろうと感じたので、その特徴を書きました。

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