「取材ライターは一体どれくらいの原稿料をもらって書いているのか」
ライターの多くが同業の収入には関心があるでしょうし、副業したり独立したりする人が増えている今、ライターでない人の中にも興味を覚える人は少なくないでしょう。
過去のぼくもそうでした。
さて、独立しようと思ってもネットの中には具体的な情報が少なく、ライターの相場がわからないまま「えいやっ!」と飛び込んだこの世界。
今でこそ「相場なんてないよ、それは自分でつくっていくものだよ」などと恰好をつけて言えますが、当時は「生活していけるだけの原稿料をもらえるのだろうか…」とびくびくしていたものです。
現在、クラウドソーシングサービスの普及に伴って、その代表企業である「ランサーズ」などの利用者の中にはネット上で文字単価を公開している人もいるので費用感をつかみやすいでしょう。
しかしながら、取材ライターは在宅ライターよりも少なく、さらに在宅ライターよりもツイッターを利用したりブログを運営したりしている人が少ないため、必然的に原稿料に関する情報が乏しい。
そこで今回、過去のぼくのように独立に向けて疑問や不安を抱えている人、取材ライターの仕事に興味がある人に向けて、フリーライター・ショウブ(@freemediwriter)がもらってきた原稿料を公開します。
ある医療ライターが書いてきた媒体のジャンル
ぼくが2016年3月に独立してから2019年8月現在までに仕事をしたのは25の企業・部署で、書いてきた媒体のジャンルは下の通り。本は書いていません。
- 一般向け雑誌
- 一般向け専門誌
- 医療者向け専門誌
- 医療機関や製薬企業が発行する広報誌
- ウェブメディア
- 医療系企業が運営するオウンドメディア
- 医療機関のホームページ
過去にクラウドソーシングサービスを利用したり、直接契約で在宅ライティングを行ったりしたこともありましたが、それらの案件の報酬感は既にたくさん世に出ているので、取材ライティングやぼくの専門性・予備知識を生かした在宅ライティングに絞って原稿料を紹介します。
なお、原稿の内容の多くをネットで調べて書く在宅ライティングの仕事を受けたのは1社からのみなので、それを除いた24社・部署からピックアップしました。
載せている原稿料は全て税別です。
医療ライターの原稿料の幅
1本当たりの原稿料は最も低いもので1万円、最も高いもので12万円でした。
原稿料が最も低かったもの
媒体:ウェブメディア
文字数:約3500字
原稿料:1万円(文字単価:約3円)
原稿料が最も高かったもの
媒体:製薬企業が発行する広報誌
文字数:約8000字
原稿料:12万円(文字単価:15円)
中央価格帯「3~5万円台」のうち最多は「5万円台」
原稿料の幅だけではイメージしづらいと思うので、ぼくが今まで仕事をした企業からもらった原稿料を「1~2万円台」「3~5万円台」「6~12万円台」の3つの価格帯に振り分けてみました。
1つの企業の中で複数の部署からそれぞれ違う原稿料で仕事を請け負ったり、また同じ部署でも仕事の条件が違うことで原稿料が変わったりしたケースもあるので、下の数字は価格帯ベースで出しています。ぼくの仕事ぶりを評価してもらって途中で原稿料が上がった場合も同様です。
どういうことかというと、同じA社から●万円、▲万円の仕事を受けたことがあって、それらが同じ価格帯に入らないとしたら、それぞれの価格帯に1社ずつ追加しているということです。
結果は下の通り。
1~2万円台…7(社・部署)
3~5万円台…13
6~12万円台…8
3~5万円台の原稿料を支払ってくれた企業・部署が最も多いことがわかりますね。
では、この価格帯をさらに細分化してみましょう。引き続き、原稿料ベースで数字をカウントしました。
3万円台…4(社・部署)
4万円台…4
5万円台…6
5万円台の原稿料を支払ってくれた企業・部署が最も多いことがわかります。
5万円台案件の文字単価は33~8円
文字数はどうでしょうか。最も多い5万円台の案件を例に挙げます。
A社…約1500字
B社、C社…約2500字
D社…約4500字
E社…約5000字
F社…約6000字
文字数は約1500文字~約6000字で、1文字当たりの単価としては約33円~約8円になります。
「紙の方がまだまだ高い」とは言えなくなってきた
「紙は廃れていってるけど、まだまだウェブよりはお金いいよね」
ネットの中にはこんな意見があってぼくも独立して間もないころはそう感じていましたが、「どうやらそうでもないぞ」というのが今の実感です。
確かに上に挙げたB社は週刊誌を発行する出版社で原稿料は低くなかったんですが、読者層が限られているある専門誌では原稿料がその半額でした。
その一方で、ウェブであってもメディア以外に多角的に事業を展開する企業やオウンドメディアを運営する医療系企業では原稿料が5~7万円台と低くないことがありました。
「ウェブだから安い」「紙だから高い」とは一概に言えない状況です。
どんな企業・案件の原稿料が高くなりやすい?
そんな中でも、ぼくが感じている「原稿料が高くなりやすい企業・案件」「原稿料が低くなりやすい企業・案件」は下の通りです。
原稿料が高くなりやすい企業・案件
- 雑誌の広告
- 製薬企業や医療機関が発行する広報誌
- 医療系企業が運営するオウンドメディア
- 医師から直接依頼を受けるホームページ作成
- 多角的に事業展開を行うメディア
原稿料が低くなりやすい企業・案件
- ウェブメディア
- 専門誌
これは医療ライターの特徴が反映されているものですが、「広告案件やメディア事業の収益に頼っていない企業の方が原稿料が高い傾向にある」というのは他の分野でも通じるかもしれません。
今はインターネットを使えば情報を無料で得られる時代ですから、情報を収入の柱にしている企業からの原稿料は相対的に低く、その一方でメディアによって人(読者)を集め、そこから他のビジネスを展開している企業からの原稿料は相対的に高くなりやすい、こういったことはぼく個人のケースからは言えます。
また、医療業界においてお金をたくさん持っているのは製薬企業ですから、上にも書いたように製薬企業が絡む案件は原稿料が高い傾向にあります(ある編集者によると、製薬企業から継続的に1本10万円以上の原稿料をもらうことで年収が1千万円を超えているライターもいるそう)。
いくらくらいの原稿料であれば不満を感じないか
ぼくが過去にもらってきた原稿料を紹介してきましたが、さて、その金額に対してぼくがどう思っているのか。
「そりゃ高ければ高い方がいいけど、6000字未満で5万円ほどの原稿料をもらえれば不満はない」
というのが率直な感想で、現に今もらっている原稿料の中心価格帯は5~7万円台です。
5万円の案件であれば6本書けば30万円ほどになります。ぼくはバツイチの独身で子どももいないので、一人で生活している分にはお金がそんなにかかりません。
1カ月分のミニマルライフコスト(生活に必要な最低限のお金)は約20万円なので、大きな出費がない月だと30万円の収入があれば10万円は余ります。
その一方で、5万円未満の案件が多数を占める状態だとぼくとしてはきつい。
ぼくはブログの記事を書くのも好きで将来的にはブログの広告収入を月10万円まで引き上げたいと考えているので、仕事がクライアントワークばかりになってしまうのは嫌なんですね。
ただこれはバランスの問題で、あくまでも「5万円未満の案件が多数を占める」ことを避けたいという、書いた通りの意味です。
仕事の内容が面白そうだったり、一緒に仕事する人との相性が良かったりする場合は2、3万円ほどの仕事もお引き受けしています。
ところで、この記事を読むライターやライター志望者はどう思うのでしょうか。
原稿料について「悪くないね」と思うのか、「専門ライターでもその程度か」と思うのか。
ぼくは「一匹狼タイプ」といえばかっこいいんですけど、でも、一人で黙々と書いていてストレスがかからない方で、ライターの知り合いや友だちをほしいと思ったことがなく、現にいないので他の取材ライターの原稿料はよく知りません。
多くの在宅ライターに比べれば高いでしょうが、冒頭に書いたようにライターの世界には相場なんてないとぼくは思っていて。
ウェブメディアが増えただけではなく、今はあらゆる企業が人集めのためにオウンドメディアを持つ時代ですから原稿料はまちまち。
とはいえ、ライターとしての価値を上げることで原稿料を上げることは可能なので、またこのあたりのことも書きたいと思います。
一人のある医療ライターの事例として参考にしてもらえればうれしいです。
フリーライター庄部(@freemediwriter)でした。
取材ライターは文字単価をどう捉えるといい?
追記:ぼくがこの記事をツイートしたところ、フォロワーの人から「ここまで公開してくれるとは…。ただ文字単価の幅が広いようなので、他のライターは一喜一憂することなく…」といったコメントを添えて引用リツイートされました。
おそらくこのライター(Webライター)の方は「文字単価が低いと割に合わない」といった考えを持っているのではないかと推察されたのですが、それは本やネットをリライトするWebライターが抱きがちな考えだろうと思います。
「取材ライターはちょっと違うのでは」とこの方のコメントを読んで思ったので、取材ライター志望者に読んでほしい記事を書きました。文字単価をどう捉えるかというものです。

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